Kingdom of Giants「Passenger」(2020)

カリフォルニア州サクラメント出身のメタルコア/ポスト・ハードコアバンドの4thアルバム。


10年に結成されたカリフォルニア州サクラメント出身のメタルコア/ポスト・ハードコアバンドKingdom of Giants。(キングダム・オブ・ジャイアンツ)17年にリリースされた3rdアルバム「All the Hell You’ve Got to Spare」以来3年ぶりのアルバム「Passenger」は、<Sharptone Records>から初のリリースとなる。

Kingdom of Giantsは、11年にデビューEP「Abominable」をリリース。その後、最初のフルレングスアルバムとしてリリースした「Every Wave of Sound」が、アンダーグラウンドなメタル誌から称賛を受け、一気に注目を集める。14年には、<InVogue Records>と契約。Andreas Magnusson(Haste the day/Black Dahlia Murder/Fit for a king)によるプロデュースのもと2ndアルバム「Ground Culture」をリリース。17年にはシングルをリリースしたのちNick Loiaconoプロデュースによる3rdアルバム「All the Hell You’ve Got to Spare」をリリース。ゲストとしてErraのJT・Covey(Vo)、PhinehasのDaniel Gailey(Gt)、Caitlyn Maeが参加。そして今作「Passenger」は、ゲストにVolumesのMichael Barr(マイケル・バール)(Vo)とSpiritboxのCourtney LaPlante(コートニー・ラプラント)(Vo)がゲスト参加。楽曲の魅力を十二分に引き出し、且つアルバムの流れの中でいいフックとなっている。

エレクトロな要素を大胆に導入し、メタルコア/ポスト・ハードコアという枠に囚われないサウンドとなっている。ヘヴィなリフの応酬とポップネスが絶妙なバランスで共存している点でArchitectsを、そして全体的にスタイリッシュなアレンジでまとめられているという点で、Likin Parkを彷彿とさせる。また、アルバム全体に通底している引きの美学や抑制された雰囲気は、DrakeThe Weekndなど、内省的な現行US HipHop/R&Bからの影響を色濃く感じた。そして、様々な音楽要素を独自のサウンドに昇華し、独特の世界観を作り上げているという点で、LoatheDeftonesが好きな人にオススメしたい。エレクトロな要素とバンドサウンドが違和感なく溶け合い、ここまで洗練されたメタルコア/ポスト・ハードコアのアルバムを他に知らない。


メンバー

・ Dana Willax(ダナ・ウィラックス) :Vocal (Scream Vocal)

・ Max Bremer(マックス・ブレマー) :Guitar

・ Red Martin(レッド・マーティン) :Guitar

・ Jonny Reeves(ジョニー・リーブス) :Bass/Vocal (Clean Vocal)

・ Julian Perez(ジュリアン・ペレス) :Keyboard

・ Truman Berlin(トルーマン・ベルリン) :Drums

ゲスト

・ Michael Barr(マイケル・バール) – Volumes :#08

・ Courtney LaPlante(コートニー・ラプラント) – Spiritbox  :#12

楽曲紹介

01. Two Suns

02. Night Shift

03. Sync

04. Side Effect

05. 00397

06. Burner

07. Wayfinder

08. Blue Dream

09. Sleeper

10. Bleach

11. Lost Hills

12. The Ride

#1 SEからキレのあるヘヴィリフで幕開け。オルタナティブな音楽性とポップネスがバランスよく融合された音楽性は一気に引き込まれる。昨今、ガワだけメタルコアで中はポップスと何も変わらないバンドが多かったりするが、彼らの場合はあくまでオルタナティブ側から発せられるポップさなので(分かり辛くてゴメンなさい)全く軽さを感じさせない。

#2 大胆な打ち込みは、若干80年代ディスコ的なメロウなセンスを感じさせる。キレのあるヘヴィリフが敷き詰められる。切な気な歌を前面に出したアレンジの思い切りの良さ。畳み掛けるようなアグレッシブパートを挟み、思わず一緒にシンガロングしたくなるサビ。細かく重ねたコーラスの端々にまでこだわりを感じさせる。

#3 DreakやらWeekendあたりの内省的なR&Bからの影響を感じさせる抑制を効かせたボーカルワーク伸びやかに躍動するサビとのギャップが非常に印象的な楽曲。

#4 打ち込みとバンドサウンドが見事に絡み合った楽曲。どちらかというとスタイリッシュな印象。落ち着いていながら一気に熱を帯びるサビがエモい!!弦楽器のような音色がアクセントとなって迫力の演出を聴かせてくれる。

#5 インタールード。まるでディストピア映画でも始まりそうな重厚なSE。

#6 インタールード#5とのギャップが激しい#6はArchitectsを彷彿とさせるエグめなリフの波状攻撃でスタート!!随所に登場する切なげなアルペジオやコード進行が楽曲に彩りや奥行きを持たせている。

#7 うねるようなリフのループが強烈なグルーヴを生み出している。New Waveを感じさせるシンセ音とバンドサウンドの融合はクセになる!!

#8 タイトル通り楽曲全体を覆うドリーミーな雰囲気が非常に心地よい。内省的な世界観を感じさせる歌と激烈シャウトのギャップは刺激的!!攻め一辺倒ではない彩り豊かなバンドサウンドはDeftonesやLoatheあたりとも通じるものを感じる。Jonny Reeves(ジョニー・リーブス)よりちょっと低い歌声がゲストのVolumesのMichael Barr(Vo)。声質が正直似ている上に、彼はシャウトもしているのでどこを歌っているのか正直分かり辛いと思う(笑)詳しくはこちらをご確認ください→https://genius.com/Kingdom-of-giants-blue-dream-lyrics

#9 かなり抑制の効かせたロボ風ボイスと肉薄するような怒涛のバンドサウンドとの振り幅が奥深い世界観を作り出している。

#10 奥行きのある音像と音色から、宇宙を連想させる。シンプルながら一発一発の重みで存在感を見せつける。リズム隊の力強さが壮大な世界観を演出している。

#11 DrakeやThe Weekndの内省的な面とメタルコアを融合させたような曲。#10同様奥行きを感じさせる音像と引き締まったヘヴィなリフが共存。

#12 基本ラインのスタイリッシュなトーンと楽曲をドライヴさせるニューメタルなバウンスサウンドの共存が面白い。漂うような独特な存在感を感じさせるSpiritboxのCourtney LaPlante(Vo)の歌が印象的。