ALLEGAEON「Damnum」(2022)

2022年3月24日

アメリカのテクニカル・デス・メタルバンドによる6作目フルレングスアルバム。

アートワークはTravis Smith(トラヴィス・スミス)が担当!!

「Damnum」(ダムナム)は、3年ぶりのリリースとなるアルバムです。タイトル「Damnum」ラテン語で「損失」を意味し、メンバーが経験した多くの死が歌詞のテーマなどに反映されているといいます。

メンバーの入れ替えが激しい彼らですが、20年にドラマーのBrandon Park(ブランドン・パーク)が脱退し、今作からJeff Saltzman(ジェフ・サルツマン)が加入。全メンバーが楽曲制作のプロセスに関わった初めての作品ということから、新メンバーJeff Saltzmanの複雑なドラミングスタイルが多少なりとも今回の作風に影響を与えた部分もあるのではないかと推測します!!

そんな今作は、前作のアグレッシブなテクデス+モダンメタル路線からプログレッシブ方面に舵を切ったことで、前作以上に豊かな場面展開が楽しめることに。今作は特に初期〜中期のOpethやKatatonia等のテイスト(特に静かなパート)を織り交ぜた、ブルータル性はしっかり残しつつも叙情性の強い楽曲が多く収録されている印象を受けます。

プロデューサーは毎度お馴染みFlatline Audio StudioのDave Otero(デイブ・オテロ)!!2ndアルバム「Formshifter」(12)以来、彼らのバンドサウンドを手掛けています。個人的には彼らのサウンドは彼と唯一のオリジナルメンバー、ギターのGreg Burgess (グレッグ・バージェス)が作ってきたと言っても過言じゃない気がします。

アグレッシブな前作からさらに深みを増し、メンバー各々の豊かな音楽的バックグラウンドが反映され、より多くの人が楽しめる作品になったのではないかと思います!!

メンバー

Riley McShane(ライリー・マクシェーン):Vocals

Greg Burgess (グレッグ・バージェス):Guitar

Michael Stancel(マイケル・スタンセル):Guitar

Brandon Michael(ブランドン・マイケル):Bass

Jeff Saltzman(ジェフ・サルツマン):Drums

ゲストミュージシャン

Tommy Bonnevialle(Pf)

Joe Ferris(syn/orch)

楽曲紹介

1. Bastards of the Earth

2. Of Beasts and Worms

3. Into Embers

4. To Carry My Grief through Torpor and Silence

5. Vermin

6. Called Home

7. Blight

8. The Dopamine Void pt. 1

9. The Dopamine Void pt. 2

10. Saturnine

11. In Mourning

12. Only Loss

#01 幽玄なギター2本によるしらべから激烈なバンドサウンドへ突入。慟哭のツインリードと鋭利なギターリフが共存。攻撃的な中にもクラシカルなフレーズをサラッと混ぜ、世界観に奥行きを持たせる。流麗でメロディアスなギターソロがとにかくクール!!イントロの雰囲気にも近いクリーンボーカルパートがとにかく素晴らしい。悲しげなメロディラインとギターの旋律が胸を打つ。

#02 Opeth、Katatoniaあたりの静寂パートを彷彿とさせる冒頭から怒涛の疾走チューンへ。獰猛なスラッシーリフ〜暴れ回るギターソロなど様々なパートが入れ替わり立ち替わり登場。宝箱をひっくり返したかのような楽しさがある。

#03 掘削機で岩石を粉々に砕くが如くの鬼の刻みリフが終始襲い掛かってくる。曲中何度も登場する浮遊感漂うテーマフレーズとのギャップが面白い。そして終盤にはクリーンでのハイトーンボーカルが登場!!衝撃!!

#04 アルバム中、1,2を争うブルータル度。しかし一辺倒ではなく、彼ら得意のスパニッシュ風ギターソロをさらっと挟み、叙情的なアプローチを忘れない!!さらにエレキギターによる流麗なソロが始まるのだが、もう少しデスメタル然としたアレンジが聴きたかった。

#05 思わず拳を上げたくなる冒頭のフロアタムによるビートが最高にカッコいい!!スラッシーなリフの応酬が音の壁となって圧倒的な存在感を見せつけてくる。しかしギター弾きまくりますな〜!!終盤のジェントリフでモダンな雰囲気のままスパッと終わり!!

#06 Opeth、Katatonia等からの影響が色濃い、歌を大事にしたプログレサウンドを聴くことができる。音と音の間を大事にしたアレンジからテクデス然とした敷き詰め系アレンジまで振り幅の広いサウンドになっている。

#07 凶悪極まりないバンドサウンドに人間とは思えないガテラルボイスがスピーディに畳み掛けてくる。荘厳でクラシカルなアレンジがブルータリティ満載なサウンドと掛け合わさり、曲に奥行きを作る。

#08 ⑧と⑨は組曲形式になっている。Part1であるこちらは、この世ならざる地に誘われるような、Opethあたりの影響を感じさせるどこか幻想的なフォーク。

#09 Part2は、激烈なバンドサウンドが襲い掛かる。緩急つけた流れのなかでも1番の聴きどころは、切れ味あるラップの高速フロウとバックのバンドサウンドの見事な合致ぶり!!これは圧倒される事間違い無い。

#10 荘厳な雰囲気の中、激烈なブラストビートが炸裂!!トレモロリフを駆使したドラマチックな展開をバックに獣のようなガテラルボイスが慟哭の雄叫びを上げる。駆け巡るギターソロにはとにかく圧倒される。

#11 2本のアコースティックギターが絡み合いながら繊細な音を紡いでいく。

#12 筋肉質なグルーヴメタル!!情け容赦ないブラストビートから一気に霧が晴れたような前向きなメロディーを歌い上げる。今までの作風とはまたガラッと雰囲気を変えてきた印象。