Vein.fm「This World Is Going To Ruin You」(2022)
マサチューセッツ州ボストンのカオティック・ハードコアバンドによる2ndアルバム。
10年代のハードコア界隈を代表するマスターピース「Errorzone」(18)は地元ボストンの先輩であるConvergeを始め、BotchやDEPのカオティック・ハードコアの影響をベースに、ニューメタル、メタルコア、デスコア等のエッセンスをぶち込んだ結果、デビューアルバムとは思えないぶっ飛んだスキルと類稀なるセンスで、どこか懐かしくも異常なまでに計算し尽くされた異形のサウンドを、それこそCode Orangeの「Underneath」(20)の2年も先駆けてシーンに叩きつけた。特にハードコアに軸足を置きながら複雑怪奇な展開をこともなげにやってのける、それこそSlipkotやKornあたりから始まったシーンの一連の流れを噛み砕き、細かく編集、再構築したサウンドは完全に世代交代を意味していた。
その後、ゴリゴリな既存曲をアンビエント・インダストリアル・テクノ・ノイズロック等が內包されたサウンドに再構築したリミックスアルバム「Old Date in a New Machine, Vol. 1」(20)を経て、リリースされた今作「This World Is Going To Ruin You」は、前作のドラムンベースの様な分かりやすい飛び道具的要素は鳴りを潜め、サウンドは前作以上にブルータル!!複雑怪奇なアレンジがより血肉化し、よりナチュラルな印象を受ける。
アルバム1枚を通して”人が生まれてから亡くなるまで”を表現しているという今作。濃い世界観を持った曲が並びながらも、流れから逸脱したり変な主張をするような曲が無く、一曲一曲が曲間無く並んでいるため、12曲32分で「This World Is Going To Ruin You」という大きな1曲を形成しているような印象も受けた。
グラミー賞受賞プロデューサー、Graphic Nature Audioの Will Putneyがミックスとマスターを担当!!ThursdayのGeoff Rickly、Jeromes DreamのJeff Smith、ラッパーのBonesがゲスト参加!!そして今回は<Closed Casket Activities>と<Nuclear Blast>の2レーベルからの同時リリース!!←改めて彼らに対するシーンの期待の高さが窺いしれる。
Code Orange、Jesus Piece、Knocked Looseと共に、シーンのゲームチェンジャーとしての彼らの今後の活動に注目すべし!!
メンバー
・ Anthony DiDio(アンソニー・ディディオ):Lead Vocal
・ Jeremy Martin(ジェレミー・マーティン):Guitar
・ Jon Lhaubouet (ジョン・ラウブエ):Bass、Backing Vocal
・ Matt Wood(マット・ウッド):Drums
・ Benno Levine(ベンノ・レヴィン):Samples
楽曲紹介
01. Welcome Home
02. The Killing Womb
03. Versus Wyoming
04. Fear In Non Fiction(feat. Jeff Smith )
05. Lights Out
06. Wherever You Are
07. Magazine Beach
08. Inside Design
09. Hellnight(feat. Geoff Rickly )
10. Orgy In The Morgue(feat. Bones)
11. Wavery
12. Funeral Sound
#01 女性の電話の音声(?)と共にうねるようなヘヴィサウンドが迫り来る。live映えする一曲!!
#02 冒頭の印象的なサウンドが一気に悪夢へと導かれる。カオティックなテーマリフからブチギレ寸前のアグレッションでリフをぶち込んでくる流れはとにかく圧倒される。ブレイクダウンパートはひたすら暴れるのみ!!
#03 凄まじい衝撃でいつのまにやら宇宙へ吹き飛ばされてしまったかのような印象。Mike PattonやDEPの狂った世界観を彷彿とさせる。
#04 冒頭のブチギレシャウトとグルーヴィなリフが印象的。サビの疾走パートへの切り替えが最高にカッコいい。広がりあるメロウなサビから叙情的なパートを経てさらにカオティックに突き進んでいく様は圧巻の一言。
#05 扉を閉めるSEから怒涛のリフの鶴瓶打ち状態!!1分ちょっとの駆け足の中で、シャウトの掛け合いがあったりブレイクで一気に落としたりと目まぐるしいジェットコースターのような展開を聴かせてくれる。
#06 ベースのワンフレーズとドラムで独特の空間を作っていく。終盤に進むにつれて幽玄なコーラスワークが重ねられていくダウナーな一曲。
#07 どこか少年性を持った歌声が楽曲に色を加えていな雰囲気はありながらも若い、青い印象を受けた。
#08 冒頭から忙しなく畳み掛けるようなハードコア。最近なかなか聴けないノリノリなDJスクラッチはニューメタル大好きおじさん必聴!
#09 大きく抉るような強力なリフと中盤登場するサンプリングボイスを絡めた素早いドラム捌きパートが印象的。シリアスでありながら人懐っこいパートもさらりとやってのける彼らの引き出しの多さはさすが!!
#10 ラッパーBonesをフィーチャリングした作品。そしてストロングなカオティック・ハードコア!!正直Bonesがシャウトしてる印象がなかったので驚いた。
#11 Deftonesにも通ずるダークでメロウな曲。リミックス作品でも少し顔を覗かせていたが、彼らのこの手のメロディの立った作品、もっと聴きたいなぁ。
#12 消え入りそうな歌と幽玄なピアノ。NINを彷彿とさせる冷たくシリアスな空気感。プログレッシブで実験的な曲。冒頭の女性の会話音声の続きなのか??1曲目と呼応した世界観であることは確か。こういったドラマチックな曲をVein.fmが作るとは・・・圧倒された。
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