Loathe「I Let In And It Took Everything」(2020)

2020年10月29日

UKはリバプールのメタルコアバンドの2ndアルバム。


高校で一緒だったボーカリストのKadeem France(カディム・フランス)とギタリストのErik Bickerstaffe(エリック・ビッカースタフ)を中心にLoathe(ロース)の前身となるバンドOur Imbalance(アワー・インバランス)を結成。14年にLoatheに改名。その後、ImmerseのギタリストConnor Sweeney(コナー・スゥイーニー)とベーシストのShayne Smith(シェイン・スミス)、Treasure The MomentのドラマーSean Radcliffe(ソン・ラドクリフ)を加え、EP「Prepare Consume Proceed」を発表。

15年にはDeadbolt Festibalに出演。その後も、Empires FadeOceans Ate Alaskaといったバンド達と大小問わず、様々な場所でライブ活動を行ってきた。

17年に<SharpTone Records>と契約し、「Prepare Consume Proceed」をリイシュー。Kerrang!Magazineで高評価を受けた彼ら。その後も、様々なフェスやツアーに参加し、培ったスキルをもって制作されたのが1stアルバム「The Cold Sun」。プロデューサーにはMatt MacLennanを起用、シューゲイズ、ブラックメタル、オルタナ、ポストメタルなど様々な要素をLoathe流メタルコアとして昇華することに成功。HarbingerBury Tommrowといった面々とツアーを廻る中で、確実に彼らのファンベースは拡大していく。

18年にHolding AbsenceとのスプリットEPを発表。Holding AbsenceとともにUKを代表するニューカマーとして 注目を集める。18年に活躍したイギリス出身バンドとしてMetal Hammer Golden Gods Awardにノミネートされるなど、メタルコア界隈では今強烈な存在感を見つけている。19年には、Crystal Lake主催のTrue North Festival 2019への出演、そしてSworn Inとのダブルヘッドライナーツアーが日本で実現するなど、勢いに乗っている彼ら。

音楽ルーツ

彼らのバンドサウンドは、Korn、Deftones、Slipknotから影響を受けていることはもちろん、ヘヴィな歪みとクリーンギターの使い分けに関してはDeftonesやMeshuggahから、実験的な部分はRadioheadから、そして10代の頃は、Attack Attack!やMiss May Iからの影響を受けていたという。また、メタル以外だと山岡晃「Silent Hill 2」、芸能山城組「AKIRA」、Vangelis「Blande Runner」等のサウンドトラックからの影響を公言している。これらの作品は、1stアルバム「The Cold Sun」の世界観に影響を与え、AKIRAはジャケットデザインに影響を与えた。


メンバー

・ Kadeem France(カディム・フランス): Lead Vocal

・ Erik Bickerstaffe(エリック・ビッカースタフ):Guitar、Vocal

・ Connor Sweeney(コナー・スゥイーニー): Guitar、Vocal

・ Feisal El-Khazragi (ファイサル・エル・カズラギ): Bass、Vocal

・ Sean Radcliffe(ソン・ラドクリフ): Drums

楽曲紹介

01. Theme

02. Aggressive Evolution

03. Broken Vision Rhythm

04. Two-Way Mirror

05. 451Days

06. New Faces in the Dark

07. Red Room

08. Screaming

09. Is It Really You?

10. Gored

11. Heavy Is the Head That Falls with the Weight of a Thousand Thoughts

12. A Sad Cartoon

13. A Sad Cartoon(Reprise)

14. I Let It in Took Everything…

#01 どこか悲しげな雰囲気が漂う、オープニングにふさわしいインスト曲。かすかに聞こえる人の声やフィールドレコーディングのような自然の景色を想起させる音が交わり、映画的なサウンドになっている。まさに嵐の前の静けさといったところ。

#02 鈍器のように重たいバンドサウンドが唐突にリスナーを殴りにかかる。ヘヴィなグルーヴで引っ張っていく。サビは息多めのDeftones的雰囲気と歌唱法がとにかくカッコいい!!曲の途中途中に間を意識的に置くなど、楽曲の作りからくるものもあるだろうが、特徴としてはやはり音がメタルメタルしていない、綺麗に整理されているといった点だろうか。

#03 カオティック・コア風味の楽曲。音が整理されていてすごく聴きやすい印象。リフも何気にキャッチーだし、この手の音楽を普段聴かない人にも受け入れられると思う。

#04 シューゲイザーからの影響が伺える楽曲。こういった曲を、さらっと入れてくるあたりやはり、まずジャンルありき、ではなく表現したいものが明確にあるバンドなんだろうなと思う。

#05 ストリングス、話し声などが入った映画のサントラのようなインタールード的楽曲。

#06 勢いあるギターによるストロークから始まる。キタキタキタキター!!メタリックなバンドサウンドが入り勢いづく、がこれまた彼ららしく、なかなか簡単には暴れさせてはくれない。コロコロコロコロリズムが展開していく。こういった音楽はもう逆らわずに黙って音に身を任せるだけ!!

#07 アンビエント感のあるオープニングからヘヴィなリフとトライバルなリズムが一気に食い込んでくる。ヘヴィでカオティックなリフがとにかくカッコいい!!

#08 音がメタルというより、ガレージに近い??印象を受けた。攻撃性一辺倒ではなく、様々な感情のグラデーションがきっちり音によって表現されている。彼らの音楽的な幅の広さを感じた一曲。

#09 シューゲイザーからの影響が垣間見えるコード進行。もしくはDeftonerか??音の広がり方がとにかく美しい曲。

#10 マシーナリーかつノイジーなギターと重々しく容赦の無いドラムは、まるで工場に鳴り響く機械音のように冷たく、怖い。一度スイッチを入れたら止まらない歯車のように容赦なく動き続ける。

#11 曲間なくノリを維持したまま#11のブラストビートへ雪崩れ込む。#10の続編のような曲。強力なグルーヴと時折挟み込まれる不協和音によるカオティックなリフが容赦なく聴くものに迫る。後半の別の曲のようなギターによる静かなアルペジオが唐突に差し込まれ#10#11の流れの終わりを感じさせる。

#12 ミドルテンポによる聴かせる系楽曲。ヘヴィでうねる様なギターリフと空間を揺蕩う様な歌い方の組み合わせがカッコいいし、なによりメランコリックな雰囲気の歌メロがとにかく好きだ!!

#13 #12の余韻のような音が流れる  

#14 Loath流Djentリフが冴え渡る。白昼夢を見ているかのような輪郭のボヤけたイメージとゴリゴリのリフで攻める所の対比が面白い。ここまで聴いて思うことは、やはりシューゲイザーからの影響が色濃く現れていて、シュワーッと立ち昇ったかと思うとすぐに消えてしまいそうな儚さのようなものがアルバム全体を通して感じられた。

この手のバンドの中で明らかに、シューゲイザーやNew Waveを通過したサウンドで今後Post Deftones的なポジションになっていくのではないかと思う。(もう既になってるか?)Holding AbsenceParting Giftと共に、新世代メタルコアサウンドがどのように変化していくのか?今後も注目していきたい。