Devil Sold His Soul「Loss」(2021)

2021年5月16日

ロンドンのメタルコアバンドによる4thアルバム。


Devil Sold His Soul(デビル・ソールド・ヒズ・ソウル)にとって9年ぶり4枚目のフルレングスアルバムとなる「Loss」(ロス)。<Nuclear Blast>からのリリース。

04年にバンド結成。デビューEP「Darkness Prevails」のリリース後、07年デビューアルバム「A Fragile Hope」をリリース。アンビエントやポストロックの要素が感じられる美しくも激しい独自のバンドサウンドは大きく注目を集め、ドイツの大手レーベル<Century Media>と契約。10年には、2ndアルバム「Blessed&Cursed」をリリース。バンドは世界的な注目を集める。12年には、VocalのEd Gibbs(エド・ギブス)が脱退!!後任にPaul Green(ポール・グリーン)を迎えバンドは活動を継続。その後、17年「A Fragile Hope」10周年ツアーの際に、なんとEd GibbsがVocalとしてバンドに復帰することを表明!!Vocal交代・・・まぁ海外のメタルバンドならメンバーの交代頻繁にある事だし残念だけど短かったがしょうがない・・・えっツ ツ ツインボーカル!?というわけでDevil Sold His Soulはツインボーカル体制で活動していくことに!!なかなか面白い展開!!

そんな訳で、新体制になって初めてのフルレングスアルバムとなる今作「Loss」は、過去最高にポストロック 、アンビエントからの影響が色濃い作品である。といってもマニアックにはならず、多くの人に開かれたポップ性もしっかりあるので、普段こういったジャンルの音楽を聴かない人たちにもアピールできる作品になったのではないかと思う。ポストロック 、アンビエントの要素がもたらす浮遊感、壮大なサウンドスケープと重低音の効いたゴリゴリなメタルコアサウンドの組み合わせはただただ心地良く、Deftones、Loathe、Currentsといったポストロック 、アンビエント、ニューウェーブ、オルタナなどからの影響が色濃いメタルバンドが好きな人にオススメしたい!!またツインボーカル体制となり、女性的なニュアンスが感じられるEd Gibbs一本筋の通った力強いPaul Green、というキャラクターの違う2つの歌声が存在することで楽曲に奥行きが生まれている。特に、透明感のあるEd Gibbsの歌声は、バンドが奏でる壮大なサウンドスケープと見事合致、聴く者をアトモスフェリックな音空間へ誘う。


メンバー

・ Paul Green(ポール・グリーン)Vocal

・ Ed Gibbs(エド・ギブス)Vocal

・ Richard Chapple(リチャード・チャップル)Guitar/Piano

・ Jonny Renshaw(ジョニー・レンショー)Guitar

・ Jozef Norocky(ジョゼフ・ノロッキー):Bass

・ Alex “Leks" Wood(アレックス”レクス”ウッド):Drums

楽曲紹介

01. Ardour

02. Witness Marks

03. Burdened

04. Tateishi

05. The Narcissist

06. Beyond Reach

07. Signal Fire

08.  Acrimony

09. But Not Forgotten

10. Loss

#01 コード感を全面に押し出したポストハードコア的音像をバックに激しいスクリームVoと、一聴すると女性的なニュアンスも感じ取れる繊細なクリーンVoが交互に登場。控えめなバンドサウンドの中にあって2人のボーカルワークが世界観を構築していく様は圧巻。

#02 透明感のあるギターのアルペジオが印象的。歪んだギター、ベースとの対比が面白く、楽曲の世界観に立体感を与えている。神々しさすら感じるドラマチックな展開はポストハードコアの数ある到達点の一つと言っても過言ではない。

#03 疾走感あるツービートを始め、透明感あるアルペジオパートやヘヴィなリフによるブレイクダウンパートなどが交互に登場。先が読めない部分もあるが、各々のセクションがあるべき場所にしっかりあるので、リスナーも無理なく世界観に入り込めると思う。

#04 「タテイシ」?日本語的な響きが妙に気になるこの曲。叙情的なコードアプローチから一気にツービート爆裂ハードコアへ。そしてゆったりとしたリズムへと展開、大いに歌い上げる、、、この流れ!なんて気持ちが良いのだ!!#3同様、5分を超える尺の中で、様々に展開し、緊張感を維持したまま最後まで引っ張っていく技量は流石である。

#05 踏切を彷彿とさせる危なげな音が鳴り響く中、(ConvergeThe Heroを彷彿)今までの曲の流れから一転、禍々しいコードフレーズが楽曲を支配。ヘヴィかつドゥーミーな世界観に彼らの新たな一面を発見。

#06 空間系エフェクターをかませた疾走感あるギターフレーズが印象的。希望あふれるサビでの高音アルペジオに光を感じる。

#07 #6の流れを踏まえ、気持ちポストロック方面に舵を切った曲。陽の空気に満たされた楽曲。中盤の透き通るようなアルペジオからアコースティックギター、ピアノと音を重ねていく中での、木漏れ日が差し込んでくるような暖かい空気が印象的。

#08 うねるようなヘヴィリフと歌のマイナー調のメロがクセになる一曲。後半の3拍子の展開から終わりにかけての流れがシアトリカルな雰囲気で面白い。

#09 全体に漂う浮遊感と、地を這うようなヘヴィグルーヴパートが共存。7分間のなかで様々な景色を見せてくれる。

#10 #9を噛み締めながら#10へ。ほぼほぼピアノと歌のみで曲の半分過ぎまで引っ張るバンドとしてのパワーに圧倒。そしてそこからバンドサウンドが入り、一気に感情はマックスに向かう。コップから水が溢れ出すような感情の動きがバンドサウンドとして上手く表現されていると思う。