Cult of Lilith「Mara」(2020)

アイスランド出身のテクニカル・デス・メタルバンドの1stアルバム。

アートワークはEliran Kantorが担当!!それにしても一体何があったん??な世界観

テクニカル・デス・メタルバンドCult of lilith(カルト・オブ・リリス)初のフルレングスアルバム「Mara」。過去作は16年にリリースされたEP「Arkanum」のみにも関わらず、いきなり老舗レーベル<Metal Blade>からのリリース!!(・・・な、なんて奴らだ)プロデューサーには、Allegaeon/Cephalic Carnage/Cattle Decapitation等を手掛けてきたDave Otero、アートワークは、Testament、Mekong Delta、Sighなどを初め、多数のメタルバンドを手掛ける、お馴染みEliran Kantorという最強の座組!!というところからも彼らへの評価と期待値の高さが窺える!!このバンドは、既に他のバンドでのキャリアがあるメンバーで組まれたバンドなので、(詳しくはメンバー紹介のコーナーに記載)積み上げてきたスキルや経験が楽曲に自然と反映されているのであろう。スキルの高さはもちろんのこと、音楽的なバックボーンの幅広さや、繰り返し聴きたくなる奥深さを感じる。

前作のEP「Arkanum」は、バロック音楽やプログレッシブな要素は無くは無いが、まだまだバンドサウンドと一体感を感じるまでには至っておらず、ボーカルワークも基本的にはグロウルのみである。その点、今作は、テクニカル・デス・メタルを基本に、バロック音楽、フラメンコ、オペラなどが融合した、シアトリカルでプログレッシブな世界観をスリリングに展開!!Akercocke+Necrophagistとも言えるだろう。また、伸びやかなクリーンボイスから、ささやき声、パワー漲るオペラ歌唱から強烈なシャウトやグロウルまで演じ分けるように、多彩なボーカルワークを駆使する変態的なスタイルはMike Pattonに近いものを感じる!!特に#2や#5は圧巻!!またCult of lilithの顔とも言える美醜織り織り交ぜた多彩なギターワークは、デスラッシュバンドRevocationを思い出させる。時に楽曲を引っ張り、時に彩りを添えながら縦横無尽に駆け巡る様はなんとも痛快!!

テクデスファンだけじゃ無く、デスコアやメロデス、プログレ系のファンにもお勧めできる内容!!今後どのような方向性に進むのか?逐一チェックしていきたいバンドである!!


メンバー

・ Mario Infantes(マリオ・インファンテス) :Vocal → JOTNAR

・ Daníel Þór Hannesson(ダニエル・オア・ハネソン) :Guitar → ZAKAZ

・ Kristján Jóhann Júlíusson(クリスチャン・ヨハン・ジュリウソン) :Guitar → ZAKAZ

・ Samúel Örn Böðvarsson(サミュエル・オルン・ベーズヴァルソン) :Bass → AETERNA

・ Kjartan Harðarson(ジャルタン・ハルザーソン) :Drums → KALEIKR

楽曲紹介

01. Cosmic Maelstrom

02. Purple Tide

03. Enter the Mancubus

04. Atlas

05. Comatose

06. Profeta Paloma

07. Zángano

08. Le Soupir du Fantôme

#1 美しくも怪しげなチェンバロの音色が響き渡る。間髪入れず叩き込んでくるエクストリームなバンドサウンド!!ブルータリティ溢れる高速ドラミングと慟哭のヘヴィリフが渾然一体となって絡み合い迫ってくる。クラシカルな質感を感じさせるギターソロがなんとも美しい。

#2 シンセとギターによる怪しげなテーマフレーズが印象的な曲。疾走感ある変幻自在のヘヴィリフ〜効果音的な鍵盤の音色〜怪しげな喋り声などシアトリカルな世界観が待ち受けている。特にプログレッシブな質感を感じるハモンドオルガンの音色が心地良い。

#3 B級ホラー感漂うイントロから、流麗かつブルータルなメロデス/デスラッシュリフが暴れまわる。テクデスならではのブラストビートを絡めたスピーディーかつ細い展開に圧倒される。中盤に瞬間的に登場する歌物パートは、歌のエフェクトの掛け方に若干Cynicを思い出させる。

#4 幽玄なギターと歌による導入部から一転、ジェントチックなヘヴィリフが切り込んでくる。コード感やフックの端々に若干Opeth的なメロディセンスを感じさせる。

#5 細かく展開していくテクデスリフの応酬の最中、ここに来てMike Patton的な変態性が露わになる多重人格ボイスが印象的な楽曲。

#6 疾走するメロデスリフ!ブラックメタル的なリフ弦楽器を絡めた大仰なパートを経てのフラメンコパートの流れがカオティック!!最後の最後に登場するクリーンボイスでの太く伸びやかな歌い上げパートはなかなか圧巻!!

#7 速弾きフレーズを随所に絡ませたテクデスらしいスピーディな展開の曲。独特の間(ま)を活かした切れ味のあるリフがクセになる。終盤のブレイクは音が分散してしまい破壊力に欠けもったいない気がしてしまう。

#8 幽玄なギターをバックにオペラ風の野太い歌声が空間を支配する。個人的にはシアトリカル+テクデスという彼らの持ち味が最も上手く凝縮された曲だと思う。