Cloudkicker「Solitude」(2020)

2020年9月18日

オハイオ州コロンバス出身のBen Sharpによるベッドルームミュージックプロジェクト。


00年~10年代初頭にかけて、メタル界隈に台頭してきた自宅スタジオで音楽制作を行うベッドルームミュージシャン達。Misha Mansoor、Tosin Abasi、Angel Vivaldi、Chimp Spannerなどが活躍する中、孤高の存在だったのがCloudkicker(クラウドキッカー)ことギタリストのBen Sharp(ベン・シャープ)だ。インタビューなどは断っていたようで、素晴らしい才能を持ちながらも謎めいた存在だったようだ。

15年リリースの「Worm」をもって"The Discovery“から始まった一連の音楽的探求を終わらせ、16年に活動休止に入る。長いこと音楽活動から離れていたが、19年に、「Unending」で復活。この作品は、今までの作風と未来を作品をつなげる架け橋的な作品となった。

今作「Solitude」(ソリテュード)は、今までの中で最もダークな作風に振り切ったアルバムである。現在、感染症を始め、人種差別、気候変動など、人々が日々悩み苦しみ、傷つけ合うという混迷を極めるこの世の中を作品に反映させた結果、自然とこういった作品になったという。ブルータルなサウンドとポストメタル/ポストロック的な浮遊感、メランコリックなメロディが内包された独自のサウンドは、凡百のバンドが到底敵わない、作品としての強度がある。


メンバー

・ Ben Sharp(ベン・シャープ) 

楽曲紹介

01. Ludendorffbrücke

02. What They Do Is Not Art

03. Code Language

04. Ashtabura

05. I’m Glad You Still Have a Sense of Humor…

06. I wouldn’t if I were you.

07. 94Days

08. Banqiao

09. Not to Scale or Painted

10. Off His Way

11. Sandö

12. Crawl Spaces

#1 隣室で掘削作業でもしてんのかレベルの地盤ごと揺らしにかかるヘヴィリフ。そして不穏な音が重なり独特な音世界は恐怖を喚起させる。終盤、流れを断ち切るかのように突如透明感のあるNew Wave感のあるアルペジオパートへ。通常なら全く違うパートが並ぶことでコントラストを効かせ、音楽性に奥行きを作り出す効果があったりするが、ここまで両極端なパートで、しかも歌が無いとなると前衛的な響きにも感じる。冒頭から圧倒されてしまう。

#2 地を這うようなおどろおどろしいリフは、Neurosisあたりのポストメタル的な響きを感じる。歯止めの効かない粉砕機と化したDjentリフにはただただ圧倒されるばかり。控えめなクランチサウンドや空間系音色を駆使し、間を活かした"静"のパートも非常に聴きごたえがあり、Cloudkickerの音楽的な懐の深さも感じることができる。この曲は、金や権力を得るために音楽を利用しているアーティストやグループについての歌であり、Ben Sharpのアートやアーティストに対する確固たる矜持が窺える。

#3 掘削系ヘヴィサウンド&空間系のフレーズによる不思議な音像がとにかく印象的。後半登場するドゥーミーなリフによるループは中毒性高し。

#4 ドゥーミーなリフ主体で引っ張っていく楽曲。大きく変化することはないが、一定のグルーヴを保ちながら様々に展開。物語性を感じさせる楽曲となっている。

#5 ポストロック的なリズミカルな空間系ギターフレーズが前面に出た楽曲。

#6 この楽曲を一言で表すと“轟音による静寂"だろう。シューゲイザー的アプローチをポストメタルでやってみたというか、Flyng Saucer Attackの名盤「Futher」にも通ずるヒンヤリとする冷たさを感じさせる楽曲。

#7 透明感のあるギターアルペジオが響き渡る。アルペジオのリズム感を維持したままバンドサウンドが入ることで一気に楽曲の世界観が立ち上がる。ポストロック/マスロック好きにオススメしたい曲。Don Caballeroあたりが好きな人にもオススメ!!

#8 しょっぱなからドゥーミーな轟音リフが雄叫びを上げる。途中からテンポが切り替わり、グルーヴィーなバンドサウンドがさらに殺傷力を増していく。リズムレスのドローン風セクションを挟んでさらに勢いを増す部分はあまりのカッコよさに思わず、拳を握ってしまった。

#9 ネチッこくジワジワと攻めてくるリフに要注意。中毒性アリ!!一定のグルーヴの中でフレーズやリズムのアクセントを変化させながらズルズルと聴くものを引き摺り込んでいく様はSlayerの個人的名盤「God Hates Us All」にも通じる。

#10 変則的なノリが特徴の#10 各楽器は相当複雑な演奏をしていると思うが、難しく聴かせないアレンジは流石である!!

#11 ひたすらリフを刻んでいくミドル曲。単音リフによる応酬やシューゲイザーにも通じる音の壁のようなアレンジなど、緻密に練り上げられたバンドサウンドにただただ圧倒されるばかり。

#12 エレクトロニカ系の音楽でありそうなアナログ感のある温かいビートとアコースティックギターのアルペジオによる鮮やかな音色にひたすら心躍る。いつも以上にパーカッシブな表情を見せるドラムの音色が楽曲の世界観を盛り上げてくれる。

できればIntronautとのツーマンで来日公演が見たいのだが・・・だいぶ先になりそうだ。アルバム毎に様々な進化を見せてくれるCloudkicker。今後の活動にも注目していきたい。

参考資料:http://sin23ou.heavy.jp/?p=14984 Marunouchi Muzik Magazine 2020/09/16