Humanity’s Last Breath「Välde」(2021)

2021年7月16日

スウェーデンはヘルシンボリで結成されたデスコアバンドによる4thアルバム。

アートワークはAdrian Baxter(エイドリアン・バクスター)、
レイアウトはC.S.Rが担当!!

09年、スウェーデンヘルシンボリで結成されたデスコアバンドHumanity’s Last Breath(ヒューマニティーズ・ラスト・ブレス)(以下HLB)19年の3rdアルバム「Abyssal」以来2年ぶりのアルバム。今作も前作同様、<Unique Leader Records>(ユニーク・リーダー・レコーズ)からのリリース。

DjentのサブジャンルThall(ソール)の生みの親、Vildjarta(ヴィルドジャルタ)のドラマーBuster Odeholm(バスター・オデホルム)とギタリストKristoffer Nilsson(クリストファー・ニルソン)←(14年に脱退)を中心に結成。

今作「Välde」(ヴァルデ)は、Vildjarta譲りのThall(ソール)サウンドで、ホラー映画のサウンドトラックを思わせるノイジーでカオティックな世界観、プログ成分濃いめの一筋縄ではいかない曲展開、ダークで重苦しい空気を纏った独特のグルーヴが癖になる。活動初期こそ、既存のフォーマットの中でオリジナリティを表現していたように思うが、活動していく中でHLBシグネイチャーとも言える独自のスタイルを構築。

・ブラッケンドハードコア勢とも共鳴する無機質で冷酷な音像
・大仰なシンフォニックアレンジ
・展開を繰り返す曲構成、ダークな映画やゲームのサウンドトラックを思わせる情報量の多い奥行きあるサウンド

等々、彼らの音の魅力を挙げればキリがないが、上記のポイントの1つでも気になった人は是非ともHLBを聴いてみて欲しい!!メタルミュージックの枠では到底収まらない膨大な音の情報量、細かい音の配置や空間作りのこだわりを感じてほしい!!そして圧倒されて欲しい!!力技でねじ伏せるというよりも徹頭徹尾計算し尽くされたブルータルさを感じるという点では、Code Orangeが好きな人なんかも実は気に入るのでは?

改めてThallとは?

Thall(ソール)とは、11年に、スウェーデン出身のバンドVildjarta(ヴィルドジャルタ)がCentury Media Recordsからリリースしたデビューアルバム「Måsstaden」をきっかけに広まったDjentのサブジャンル。ダウンチューニングした7弦、8弦ギターのヘヴィなリフの刻みに、カオティック、スイサイダル、デプレッシヴな質感のフレーズを混ぜ、ワーミー(自由自在に音程を変化させることのできるエフェクター)やチョーキングを組み合わた、イーヴィルな響きを前面に押し出した音楽性だ。


メンバー

・ Filip Danielsson(フィリップ・ダニエルソン)Vocal

・ Buster Odeholm(バスター・オデホルム):Prod, Mix/Master, Song Writing, Live Guitar

・ Calle Thomer(カル・トーマー):Live Guitar

・ Marcus Rosell(マーカス・ロセル):Live Drums

楽曲紹介

01. Dödsdans

02. Glutton

03. Earthless

04. Descent

05.  Spectre

06. Dehumanize

07. Hadean

08.  Tide

09. Väldet

10. Sirens

11. Futility

12. Vittring

#01 ブラックメタル由来の冷たいトレモロ奏法から一気に世界に引き込まれる。ブラストビートとトレモロ奏法から形作られる冷徹で寄る辺ない世界観は唯一無二だ。

#02 Fear Factoryあたりを思い起こさせるディストピア感のあるサウンド。プリミティブなノリのヘヴィリフ、2本のギターが異なる動きをすることで作られる立体的な音像、正確無比なブラストビートなど様々な展開が盛り込まれた3分半の地獄巡り状態である。

#03 硬質なドラミングと冷徹なモールス信号のような音が印象的。密室的な暴力性からシンフォニックな雰囲気が垣間見える大仰な展開へ。奥行きのあるアレンジは恐怖すら覚える。

#04 重々しいノリから徐々に形を変え、仰々しいシンフォニックなアレンジへ。Freshgod Apocalypseを若干感じさせる疾走ブラストビート+シンフォニックアレンジは拳を突き上げずにはいられない。

#05 リフ主体でぐいぐいリズムアプローチを変えて行く。後半冷たい雰囲気のギターフレーズが響き渡り、太く伸びやかなクリーンボーカルによるサビへ。

#06 ホラー映画の劇伴のような暗さが印象的。重たいハンマーを振り下ろしたかのような破壊的な重さを感じさせる咆哮&バンドサウンドから一気に曲は動き出す。疾走ツービートや極悪ビートダウン、不協和音混じりのリフアプローチなど、”今”が感じられる盛り沢山な内容になっている。

#07 じっくりグルーヴィに攻める部分とFleshgod Apocalypseあたりを感じさせるエクストリーム&シンフォニックパートが交互に登場。キャラの違うパートが1つの曲の中で有機的に作用し合い、各々がより際立って聴こえる。

#08 細かいアレンジのこだわりが見える冒頭のバンドサウンドから変則的なリフの一連の流れはお見事!!エグめなブレイクダウンも印象的だが、終盤のシューゲイザーライクなコードかき鳴らしをバックに歌う、低音で伸びやかなクリーンボーカルが独特の冷たさを放っていて好きだ。

#09 弦楽隊による厳かな旋律からイーヴィルなリフ。まるで何かの儀式の始まりを告げるかのようなラッパの音が響き渡り、再びイーヴィルパートへ。次々と世界観が移り行く様はとにかく圧巻!!

#10 大分イーヴィルな雰囲気が強くなってきた#10。的確に表現できないが、フレーズだけではなく音の配置や空間の使い方にブラッケンドな要素を感じる。

#11 デスメタリックなトレモロフレーズがなんともカッコいい!!ブラックメタル的な悲壮感漂う大仰なアレンジが最高にクール!!

#12 大地を揺らすようなダイナミックなビートをバックに、トレモロ混じりの細かいフレーズやエフェクトサウンド、カオティックなノイズなど様々な要素が展開されていく。漆黒のグルーヴが渦巻く締めに相応しいヘヴィな一曲。

参考資料

・Djentガイドブック: プログレッシヴ・メタルコアの究極形態 (世界過激音楽) 脇田涼平著 2021年3月12日発行(出版社:パブリブ)
※コンポーザーであるBuster Odeholmのインタビューが載っています。使用機材やThallの成り立ち等、貴重な内容が満載です!!