Vexed「Culling Culture」(2021)
UK/ハートフォードシャーのモダン・メタルコア・バンドによるデビューアルバム。
19年、UKで結成された新人メタルコア・バンドVexed(ベクセド)。2枚のシングルをリリース後、発表した今作「Culling Culture」(カリング・カルチャー)が初のデビューアルバムとなる。名門<Napalm Records>(ナパーム・レコーズ)からのリリースとなる。
Thy Art Is MurderのC.J.McMahonをフィーチャーしたシングル「Elite」、や「Dominate」で注目を集め、Tech Fesやスイスでのツアーを経験。現在大きく注目を浴びているVexedだが、メタルコア/デスコア/Djent/プログ/ニューウェーブなどの要素を融合させた、キャッチーかつブルータルな音楽性。特にボーカルとギターのスタイルが個性的。
ボーカルMegan Targett(ミーガン・ターゲット)による幅広いボーカルワークは圧巻。どこか神秘的なクリーンボイス、破壊的なグロウルやスクリーム、畳み掛けるようなラップなど、たくさんの絵具をパレットに出して、曲によって塗り分けていくような遊び心と類稀なる表現力はVexedのオリジナリティにつながっている。また、尊敬するアーティストとして、EmmureのFrankie PalmeriやThy Art Is MurderのC.J.McMahonと共に、ラッパーのCardi BやMegan Thee Stallion、グライムMCのStormzyやSkeptaを挙げている点も新世代という感じがして面白い。
また、Jay Bacon(ジェイ・ベーコン)によるギターは、Peripheryの影響下にあるテクニカルで多彩なアプローチが魅力。Meshuggahを思わせる音像を構築し、Vildjarta、Humanity’s Last Breathを思い出させる不穏でカオティックなパートも随所に登場。地を這うようなヘヴィリフやテックメタルな速弾きフレーズ、北欧デス由来のメランコリックなアプローチ、アトモスフェリックなギターソロなどで、単調な雰囲気になりがちなメタルコア/デスコアを多彩に染め上げる。
Alissa White-Gluz時代のThe Agonist、Emmure、Evanescence、Jinjer、Periphery、Slipknot等が好きな人は絶対に聴いてほしい!!
メンバー
・ Megan Targett(ミーガン・ターゲット):Vocal
・ Jay Bacon(ジェイ・ベーコン):Guitar
・ Al Harper(アル・ハーパー):Bass
・ Willem Mason-Geraghty(ウィレム・メイソン-ゲラティ):Drums
楽曲紹介
01. Ignorant
02. Hideous
03. Fake
04. Epiphany
05. Misery
06. Narcissist
07. Weaponise
08. Purity
09. Drift
10. Aurora
11. Lazarus
#01 遠くでサイレンの音が鳴り響き、沸々と期待が煽られるオープニング。強烈なヘヴィリフと共に一気にアルバムの世界に突き落とされる。
#02 一瞬の間を置いて気づけば#2へ。基本的には#1の続きである。タイトかつアグレッシブなリフとサビのポップな歌メロのギャップがたまらない。そしてサビ裏のテクニカルなギターアレンジはひたすら拳を握って天に高く突き上げざるを得ない。
#03 不穏で靄がかかったような音像から一転、グルーヴィなリフが曲を引っ張っていく。リズムに対して倍速で畳み掛けるラップスタイルが印象的。北欧メロデス由来?のキャッチーで不穏かつ孤高感のあるフレーズが世界観を作り上げていく。
#04 曲中に何度も登場するOpethの「Ghost Reveries」あたりを彷彿とさせるクリーンギターによるメランコリックなフレーズが印象的。野獣のような咆哮と力強いサビの盛り上がりの対比が曲の陰影を際立たせ、奥深く立体的な作品に仕上がっている。
#05 サビの悲しげなピアノの音色が印象的な本作。禍々しいリフを中心に、曲全体に感じるどんよりしたグルーヴからはタイトル通り強い悲しみを感じる。サビの突き抜けるような声色や民族的な節回しが印象的。
#06 怒涛のヘヴィリフの合間合間に浮遊感やブルータルなニュアンスを感じさせるシーケンスフレーズを挿入。スタイリッシュで最高にクールな一曲。
#07 VildjartaやHumanity’s Last Breathあたりを彷彿とさせるホラー映画のような寒々しいトラックがイントロを始め随所に登場。ヘヴィリフをバックに高速ラップで畳み掛けるスタイルは問答無用のかっこよさ!
#08 タッピング奏法等によるフューチャリスティックなフレーズがキッチリ世界観を作り上げているメタルコア。Megan Targettによるどこか陽の雰囲気を感じさせる力強い歌声が全てを凌駕していると思う。
#09 次の曲へ繋げるための1分弱の小曲。北欧のポストロックやエレクトロニカ的な雰囲気を持った楽曲。陰と陽のバランスが絶妙で、なんとなくmumの「Summer Make Good」を思い出した。
#10 #9の流れから北欧のような冷たさ(UKのバンドだけど!)を感じさせるアルペジオが響き渡る。空間系のギターリフが入ることで独特の疾走感と浮遊感が生まれる。中盤、連射砲のように繰り出されるリフとスクリームによる音の塊に食らうこと間違いなし!!神々しい歌声やアトモスフェリックなギターアプローチが聴くものを異次元に誘う。
#11 4AD勢を思わせる退廃的な雰囲気の冒頭から怒涛の咆哮。叩きつけるようなバンドサウンドと連続的に鳴らされる不協和音が迫り来る。一定のグルーヴの中で地を這うようなヘヴィなリフを基軸としながら徐々にアプローチを変えていく。ゴリゴリのメタルコアだが、どこか退廃的なイメージが感じられる。サビの幻想的な歌声が印象的な一曲。
Metalcore, 音楽レビューC.J.McMahon, Culling Culture, Emmure, Frankie Palmeri, Meshuggah, Napalm Records, Periphery, Slipknot, The Agonist, Thy Art Is Murder, Vexed, Vildjarta, ラップ
Posted by msysngn
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