Chamber「Cost of Sacrifice」(2020)

2020年11月5日

テネシー州ナッシュビルのカオティック・メタルコアバンドの1stアルバム。


17年にナッシュビルにて結成。新世代メタルコアバンドの一組としてOrthodoxやThirty Nights of Violenceと共に「Kerrang!」で紹介されるなど、ここ最近台頭してきたChamber(チェンバー)。去年リリースされたアルバム「Ripping/Pulling/Tearing」は、過去にリリースされた二枚のEP+新曲という、初期にフォーカスを当てた編集盤であったため、<Pure Noise Records>からのリリースとなる今作「Cost of Sacrifice」が、初のフルレングスアルバムとなる!!

音楽性は、Botch、Coalesce、Converge、Dillinger Escape Plan といった90’sカオティック・ハードコアの影響をヘヴィな現代的ポスト・プロダクションで表現した作風。中でもカオティックなギターリフからはDillinger Escape Planの影響が色濃く感じられる。また、昨今のデスコアからの影響が感じられる強烈なブレイクダウンが随所に散りばめられているのも特徴の1つだ。

今作「Cost of Sacrifice」は、楽曲の終盤に次の曲とのブリッジパートを挿入し、まるでミックステープのように1つの流れとして聴かせたり、インダストリアルな音像とバンドサウンドの壁を取っ払うようなアプローチを聴かせるなど昨今のCode OrangeやVein以降の、新世代ならではの感覚を感じさせるアルバムとなっている。カオティックな荒削り感がカッコよかった前作「Ripping/Pulling/Tearing」だが、今作はどこを一番聴かせたいのかという部分がうまく整理された印象。前作と比べると大夫洗練され、よりキャッチーな作風となった。バンドメンバー皆の共通のフェイバリットバンドとしてDeftones、Gojira、Slipknotをあげているが、今作「Cost of Sacrifice」アンダーグラウンドな音楽性と絶妙なポップネスを併せ持つ音楽性を考えれば、それも納得である。

Code Orange、Coalesce、Dillinger Escape Plan、Knocked Loose、Orthodox、Thirty Nights of Violence、Veinといったバンドが好きな人は絶対に聴いてほしい!!


メンバー

・ Jacob Lilly(ジェイコブ・リリー) :Vocals

・ Gabe Manuel(ゲイブ・マヌエル) :Guitars

・ Christian Smith(クリスチャン・スミス) :Bass

・ Taylor Carpenter(テイラー・カーペンター) :Drums

楽曲紹介

01. Fracture

02. Scars in Complex Patterns

03. Paranoia Bleeds

04. Visions of Hostility

05. Impulse

06. In Cleansing Fire

07. Numb(Transfuse)

08. The Edge of Every Lie

09. Disassemble:Reassemble

10. Cost of Sacrifice

#1 カオティックな世界観に一気に引き込まれる。疾走感あるビートから一気に昨今のデスコアの影響を感じさせる豪快なビートダウン沼に突き落とされる。この沼にハマってしまえばあとは体を楽曲に委ねるだけ!!

#2 冒頭からやたら手数の多いドラミングに圧倒される。(さらっとブラストビート絡めてやがる)普通この手のドラミングは機械的になりがちだが、スピーディーかつパワフルな中にも細かいニュアンスが伝わるあたりはさすが!!カオティックかつマシーナリーなギターフレーズはBotchやDillinger Escape Planを彷彿とさせる。緊張感を煽るだけ煽っておいてズバッと断ち切りブリッジパートを挿入する大胆な展開はCode Orange的でもある。

#3 #2の終盤からの怒涛のブラストビートと強烈な咆哮〜ビートダウン〜カオティックかつヘヴィなリフがこれでもかこれでもかと殺人的なアグレッションで聴くものに迫ってくる。強烈なテンションながらよくよく聴けば心地よいグルーヴを保っているのはすごい!!

#4 Dillinger Escape Planを思わせるマシーナリーなリフが印象的な楽曲。この楽曲はカオティック・ハードコアというより、もう少しど直球な印象。とくに何段階にも渡って落とすデスコア的なビートダウンはエグい!!

#5 ポスト・ハードコア的なギターリフからバンドサウンドが入り、徐々にサウンドの輪郭が露わになっていく。手数の多いメタリックなバスドラムが印象的な楽曲。

#6 忙しないギターフレーズが引っ張っていくパートはリズム隊の動きも含め、独特で中毒性高し。そこからの疾走パート〜ビートダウンと凝った展開。同じフレーズでも2番ではリズムが異なるなど、細かいアレンジが冴え渡る。一瞬メロディアスな歌唱パートがあったりと最後まで油断ならない楽曲!!最高です!!

#7 90’sカオティック・ハードコアの複雑な展開と、ド直球ハードコア由来の疾走パートが共存しながらお互い有機的に作用し合い終盤に向かうにつれ勢いが増していく一曲。#6と同じく終盤にさらっと登場するメロディアス歌唱パート(こちらも一瞬!笑)。抜群のフックだとは思うが、どこか勿体ない。もう少し広げてもいい気がする。

#8 冒頭から振り切ったテンションで暴れまわる。ヘヴィなギターリフがグイグイ楽曲を引っ張っていく楽曲。比較的シンプルなアプローチの曲だが、その分一発一発のパンチは重い。

#9 加工したドラム音やマシーナリーなノイズからはインダストリアル・メタルを感じさせる。なんとなくCode Orangeとも通じるものを感じる。

#10 Gojira風味のリフアプローチが印象的なミドル曲。不穏なオブリガードフレーズや不協和音混じりのフレーズを混ぜながらも終盤に向かう中で徐々に情的な雰囲気を感じさせる。カオティックなだけじゃない!!Chamberというバンドの奥深さを感じさせる。