Ulcerate「Stare Into Death and Be Still」(2020)

2020年5月19日

ニュージーランドのデスメタルバンドの6thアルバム。


Ulcerate(ウルセレート)は、ギタリストのMichael Hoggard (マイケル・ホガード)とドラマーのJamie Saint Merat (ジェイミー・サン・メラ)によって2000年に結成。これまで5枚のフルレングスアルバムをリリース。このバンドは、ニュージーランドで最も有名なエクストリームバンドの1つで、数多くの記事で取り上げられている。北米とヨーロッパで広くツアーを行い、NeurosisGorgutsなどのバンドとよく比較される。数多のメンバーチェンジの末、現在のラインナップに落ち着く。

2ndアルバムあたりまではオールドスクールな要素もあったが、3rd以降、ホラー映画を彷彿とさせるようなドロドロとした不気味な世界観をより全面に打ち出してきた。
攻撃的なリフやブラストビートなどを重視した従来のデスメタルとは違い、どちらかと言えばミドル〜スローなテンポで、リフというよりもコードのアンサンブルで聴かせるようなスタイル、そして近年では、アトモスフェリックなアレンジもあり、キャリアは長いが、そこに甘んじることなく常に個性的なデスメタルの音を構築している。Deathspell OmegaGorgutsPortalといった、デスメタルというジャンルでありながら、自由な表現方法で常にジャンルの可能性を拡張し続けているようなバンドが好きな人は絶対に聴いてほしい!!

⬆︎のLive動画は前のアルバムの集録曲

メンバー

・Paul Kelland(ポール・ケランド):Vocal、Bass

・Michael Hoggard(マイケル・ホガード): Guitar

・Jamie Saint Merat(ジェイミー・サン・メラ):Drums

楽曲紹介

01. The Lifeless Advance

02. Exhale the Ash

03. Stare Into Death and Be Still

04. There Is No Horizon

05. Inversion

06. Visceral Ends

07. Drawn Into the Next Void

08. Dissolved Orders

#01 もう最初から説得力が違う。左右の異なるギターフレーズが重なり、コード感が前面に出るようなアレンジになっている。攻め一辺倒なアレンジに陥りがちなデスメタルにあって、細かいリズムの緩急が、Ulcerate特有の繊細な世界観作りの一端を担っている。まるで生き物のように動き回るドラムフレーズを中心としたバンドサウンドを堪能できる。少々冗長なきらいはあるが、この複雑怪奇な音像にズブズブと身を沈めることの心地良さを1人でも多くの人に味わってもらいたい。

#2 ギターによる慟哭のメロディと異様に複雑なドラムプレイの組み合わせが独特の世界観を作り出している。せきたてるように終始踏み続けるバスドラムが凄まじさに拍車をかける。

#3 比較的ゆったりしたテンポの曲。やけに複雑なドラミングと、全体のアンサンブルを念頭に置いたコード感のあるリフが印象的。アルペジオやらトレモロリフやらがそこらへんを蝶のように飛び回りながら退廃的な世界観を作り上げていく。

#4 初期4AD感のあるアトモスフェリックなイントロから、どっしりとしたメタリックでクールなリフをぶっ込んでくる。非常に間を大事に、緩急切り替えながら丁寧に世界観を描いていく。

#5 ドラミングこそデスメタル的な部分をどうにか残しているが、ギターに関しては、中盤にでてくるトレモロリフ以外は、それこそ"ポスト系"にも通ずるバンド全体のアンサンブルをアレンジの主軸に置いたプレイとなっている。

#6 どこか神々しさすら感じるアトモスフェリックなイントロからJazzのドラミングを彷彿とさせる超絶アプローチで聴くものを異界へ引きずり込む。

#7 やはりどうしても超絶ドラムフレーズに耳がいってしまうが、攻め一辺倒ではなく全体のコードアンサンブルで聴かせるアプローチは非常に独特で面白い。

#8 展開に次ぐ展開。ドロドロとしたホラーのような世界観の中を散々連れまわされる、このアルバムの中でもプログレ濃度の高い楽曲。気付けば地獄の一丁目。退廃的なアルペジオが鳴り響く中、悪夢から抜け出せない私は再び1曲目から再生するのであった・・・

もしかしたらこの手のエクストリームな音楽が好きな人の中でも、結構好みが分かれるかもしれないが、一度は聴いてみて欲しい。スルメのようにじわじわ旨味が滲み出るタイプの曲もあるので、時間がたっぷり取れるこの期間、頭のてっぺんから爪先までどっぷりとUlcerateの音楽に浸かってみよう。