The Ghost Inside「The Ghost Inside」(2020)

2020年10月29日

アメリカはカリフォルニア州出身のメタルコアバンドの5thアルバム。


The Ghost Inside(ザ・ゴースト・インサイド)の6年ぶりの5thアルバムで、<Epitaph Records>からのリリース。

前作、4thアルバム「Dear Youth」(14)リリース後の出来事として避けては通れないのが、15年に起きた衝突事故だろう。ツアー中、バンドメンバーが乗車していたツアーバスが衝突事故に遭遇。双方の運転手が亡くなり、メンバーであるギタリストZach Johnson(ザック・ジョンソン)が足の指を数本失い、ドラマーAndrew Tkaczyk(アンドリュー・カツィック)は片足を切断するという大怪我を負った。その後、メンバーは治療を続け、18年4月に、事故後初となるリハーサルを行い、19年7月に地元ロサンゼルスにて復活ライブを開催した。セルフタイトルとなる今作は、事故以来初のリリースということもあり、彼らの特別な思いが伝わってくる。

新生The Ghost Insideとして新たな一歩となった今回のアルバム。ところがここにきて、ベーシストJim Riley(ジム・ライリー)が脱退したというニュースが・・・詳しくはこちら→https://nmmag.jp/?p=81469どうやら15年当時のバスドライバーに対しての差別発言が原因ということ。残念だが、これはバンド側の判断が正しいし、自分たちの考えをしっかり表明するThe Ghost Insideはさすが!

事故当時のニュース映像や各バンドメンバーのリハビリ風景、復活ライブなど今作に至るまでの道のりが詳しくわかる作りとなっている。最後のシーンは思わずウルっときてしまう。

メンバー

・ Jonathan Vigil(ジョナサン・ビジル):Vocals

・ Zach Johnson(ザック・ジョンソン) :Lead Guitars

・ Chris Davis(クリス・デイビス) :Rhythm Guitars

・ Jim Riley(ジム・ライリー) :Bass

・ Andrew Tkaczyk(アンドリュー・カツィック) :Drums

楽曲紹介

01. 1333

02. Still Alive

03. The Outcast

04. Pressure Point

05. Overexposure

06. Make or Break

07. Unseen

08. One Choice

09. Phoenix Rise

10. Begin Again

11. Aftermath

#1 力強いドラミングはまるで新生The Ghost Insideの鼓動のよう。長く暗いトンネルから抜け出し、力強い咆哮と共に力一杯走り出す。今作のオープニングを飾るに相応しい一曲だ。

#2 バンドサウンドが一体となって走り出す。各々が出す音が今まで以上に濃く力強いと感じるのは自分だけだろうか?「Still Alive!Still Alive!」と家の中だろうと電車の中だろうと拳を握りしめてシンガロングしたくなる!!

#3 地を這うようなヘヴィリフがリスナーを煽り立てる。サビの裏でなっているアルペジオの音色は、暗闇の中で一縷の望みを感じさせる素晴らしいメロディだ。後半のブレイクダウンから再び爆発するバンドサウンドは、力強いものがある!!

#4 ストロングスタイルなヘヴィリフがバンドサウンドをグイグイ引っ張っていく!!不協和音?混じりのギターフレーズがなんとも不穏な世界を作り上げていて、より奥深いサウンドになっている。ジワジワくる終盤のブレイクダウンは何回でも聴きたい!!

#5 切れ味の良いヘヴィなリフを中心としたバンドサウンドがとにかくクール!!神秘的かつ開放感のあるサビのサウンドとの共存により多層的なバンドサウンドになっている。

#6 ヘヴィなリフからの浮遊感あるSF風フレーズの流れが非常に印象的。シャウトとクリーンボイスを重ねたサビのアレンジが面白い。今までの楽曲とは違い歌が前面に出てくる、今作ならではの一曲。

#7 アトモスフェリックな世界観を感じさせる中、非常に力強さを感じさせるプリミティブなビートが炸裂。悲しみを感じさせるギターフレーズと胸が張り裂けそうな咆哮が一体となって我々に何かを訴えかけてくる。

#8 何となく#7からの流れも汲みつつ、の空間系ギターの音色がなんとも心地よい。ヘヴィなバンドサウンドからの、サビのメロの素晴らしさにただただ圧倒される。ひたすらカッコいい!!

#9 力強いシャウトからの切れ味の鋭いバンドサウンドの流れがとにかくクール!!極悪ブレイクダウンパートはついつい一緒にシンガロング。そこからの繊細なアルペジオと間を生かしたドラミングによるパートは力強く何よりも優しい。

#10 もう客席がぐちゃぐちゃになってモッシュしてる姿が目に浮かぶ疾走感あるハードコアナンバー。希望の光を感じさせるギターフレーズがとにかく素晴らしい。この社会情勢の中、余計に心に染みる。

#11 水面が揺れるような繊細な音色から力強いバンドサウンドへ。ひたすら葛藤し、苦しみながらもここまでやってきた彼らの力強さが音となり集約されている。苦しみを糧にして新しい日々に突き進む彼らの姿勢は、この社会情勢の中多くの人たちに響くものがあると思う。

過去最高に分厚く強力な音、前作以上に充実しているクリーンなボーカルワークなど一皮も二皮も向けて帰ってきたThe Ghost Inside。ポジティブな空気に満ちた今作は、この社会情勢だからこそ多くの人たちに聴いてほしい!!