Oranssi Pazuzu「Mestarin kynsi」(2020)

2020年5月19日

フィンランドのサイケデリック・ブラックメタルバンドの5thアルバム。


Oranssi Pazuzu(オランシ・パズズ)は、09年に「Muukalainen Puhuu」でアルバムデビュー。その後、2nd、3rdとリリースを重ね4thアルバム「Värähtelijä」で一気に注目される。

Pitchforkをはじめとした欧米の大手メディアから軒並み高評価を受けただけではなく、MetallicaJames HetfieldのSpotifyお気に入りリストに入れられたことで一気に注目を集めることとなった。そしてこの度、メタルの名門レーベル<NUCLEAR BLAST>と契約し、5thアルバム「Mestarin kynsi」でついに日本デビューとなった。

元々、実験的なロックバンドをやっていたVoのJun-His(ユンーヒス)だが、EmperorのLiveを見たことがきっかけで、Oranssi Pazuzuを結成。

彼らの音楽性はブラックメタルの中でもかなり異端だが、キャリアのことを考えるとなるほどと納得してしまう。DarkthroneKing CrimsonMy Bloody ValentineRadioheadThe Chemical Brothers70年代プログレジャーマン・ロック。さらにはPhilip GlassSteve Reichといったミニマリスト等々、彼らの音楽を形容するにはありとあらゆるジャンルが引用される。それほどに、幅広い音楽性がOranssi Pazuzuを形作っている。


メンバー

・ Jun-His(ユンーヒス): Vocal

・ kon(イコン): Guitar

・ Ontto(オント): Bass

・ Korjak(コルヤック): Drums

・ Evil(イーヴル): Key/Perc

楽曲紹介

01. IImestys

02. Tyhjyyden sakramentti

03. Uusi teknokratia

04. Oikeamielisten sali

05.  Kuulen Ääniä Maan Alta

06. Taivaan Portti

#01 ギターによる怪しげなフレーズが鳴り響き、バスドラムが途中から入ってくることにより、儀式めいた色合いが濃くなってくる。電子音が入ることで、よりレイブ感が増す中、悲鳴のような声とともにバンドサウンドがスタート。溜まりに溜まった緊張感が熱となりピークを迎える。

#02 独特な電子音使いにサイケ感、もっというとクラウトロック感が十分に滲み出ている、浮遊感のある楽器。曲が進むごとに、よりドラッギーな趣が増していく。異世界転生か??と思わせる3分代後半からの曲の加速っぷりには、ただただ口をアングリと開けて立ちすくむしかない。6分代前半からの展開は、まるで映画「ヘレディタリー/継承」の結末を思わせる予想の斜め上を行く展開へ。一体私は何を聴かされているんだ・・・??

#03 鉄壁のリズム隊によるループの上を弦楽器や鍵盤、人の声などが幾重にも重ねられた音が聴く者に襲い掛かる。楽曲は様々に展開しながら、躍動感いっぱいに暴れ回る。アンビエントドローンのような後半パートが心地よい!!

#04 ギター、パーカッション、弦楽隊による三位一体が各々違うリズムアプローチをし、キーを上げ下げすることで奇妙な世界観を演出。中盤からはベースがグイグイ引っ張るバンドサウンドへ。ここにきてようやくブラックメタルらしいトレモロリフをかましてくるのは何とも彼ららしい!!

#05 #4のリバース音からが続く中、曲間無く#5へ。まるでPortisheadの異色作3rdの1曲目「Silence」をさらにノイジーにしたような雰囲気の楽曲。さらには60sサイケ のSilver ApplesやUnited States of Americaあたりからの影響も垣間見える。

#06 最後の最後にブラックメタルらしい疾走ナンバーが来たと思いきや、シューゲイザーを彷彿とさせる音の壁や、エフェクトガンガンかけまくりのVocal、得体の知れない音の洪水など、とにかくOranssi Pazuzuという世界観を最後まで徹底して貫き通している。

Oranssi Pazuzuは、ブラックメタルのスタイルをうまく利用しながら様々な音楽性を織り混ぜて、独自の世界を作り上げているバンドだと思う。プログレ やクラウトロック勢、60sSilver ApplesUnited States of Americaなどのサイケデリックバンド。また、そこから影響を受け、自らの血肉としているPortishead<Portishead頭脳“>ことGeoff Barrow界隈(Beak>Anikaなど)が好きな人との親和性が何気に高い気がする!!