Exploded View「Obey」(2018)

2020年10月29日

ベルリンで稼働しているサイケデリック・ロックバンドの2ndアルバム。


<Portisheadの"頭脳">ことGeoff Barrowに見出され、LAの名門レーベル<STONES THROW>からのリリースでも知られるシンガーソングライターAnika Henderson(アニカ・ヘンダーソン)によるプロジェクト。現在はメキシコ人ミュージシャンHugo Quezada(ヒューゴ・クエサダ)、Martin Thulin(マーティン・チューリン)と3人で活動している。

16年にセルフタイトルのデビューアルバムを<Sacred Bones>からリリース。

18年同レーベルより今回取り上げる2ndアルバム「Obay」をリリース。

フロント・ウーマンAnika Hendersonとは??

フロント・ウーマンを務めるAnika Hendersonは、音楽キャリアスタート以前は、音楽プロモーターや政治ジャーナリストをしていた。ブリストルとロンドンを行き来する中で、たまたまBeak>で歌ってくれる女性Voを探していた<Portisheadの"頭脳">ことGeoff Barrowと出会い、ルーツ的な共通項であるダブ、パンク、60sガールズポップなどの話から意気投合!! 

10年には、UKではGeoff Barrow主催の<INVEDA>、USでは名門レーベル<STONES THROW>からカヴァー曲を中心に収録した1stアルバム「ANIKA」をリリース。その後も、Neu!Michael Rotherを始め、様々なミュージジャンとコラボレーションしながら独自のスタンスで音楽をリリースしている。
彼女の特徴は、一度聴いたら決して忘れることのない歌声。歌とポエトリーリーディングの中間を行くような歌唱法は、ダーク版Nicoと行ったところか。Velvet Underground&NicoNicoです!

自身の政治的スタンスを、あくまで自然にカヴァー曲やボーカルパフォーマンスなどによって表現できる数少ないアーティストだ。

音楽性

音楽性を一言では表しづらいが、しいて挙げるならクラウトロックの影響の強いサイケデリック・ロックバンドといったところだろうか。また、ブリストル出身ということでポストパンクやダブの影響も織り混ぜてダークな雰囲気の音楽を多く奏でている。

また、メンバーが映画の劇伴も作っているからか、バンドサウンドに収まらない、より自由で映像を喚起させるような楽曲が多い。


メンバー

・Anika Henderson(アニカ・ヘンダーソン)(Anika):Vocal、Synth

・Hugo Quezada(ヒューゴ・クエサダ):Bass、Synth

・Martin Thulin(マーティン・チューリン):Drums、Guitar

楽曲紹介

01. Lullaby

02. Open Road

03. Dark Stains

04. Gone Tomorrow

05. Obey

06. Sleepers

07. Letting Go of Childhood Dreams

08. Raven Raven

09. Come On Honey

10. Rant

#1 これこれ!このノイズよ!挑発的ともいえる力強いアコギのコードストローク、anikaの歌声やマイナーコードのアルペジオなど次々と音のレイヤーが重なり、なんとも怪しげなサウンドが作られる。

#2 水槽のエアポンプみたいな音、、そこにアコギの音色、そしてダーク版NicoことAnikaの、歌ともポエトリーリーディングともとれる微妙なラインの歌声が響き渡る。
レトロなシンセ音楽が入ることで音が立体的に。アングラソフトロック、ソフトサイケ 、、そんなワードが思い浮かぶ楽曲。 

#3 規則正しくムチを打ち込むが如くのリズムマシンと忙しないトラック。徐々にエンジンがかかってくる展開はなんとも緊張感がある。

#4 細野晴臣のアンビエント系の曲(特にPHILHARMONYあたり)を彷彿とさせる、緊張感の中にもどこかクスッとさせる雰囲気を感じさせる曲。

#5アタッキーなギターのミュートフレーズ、存在感あるベース、密教的なSE、演歌でよく使われるカァ〜ってやつ(ヴィブラスラップと言うそう)が鳴らされ、、、まあ一言で言って何これ??ってな曲である。The密教!!

#6Exploded view流シューゲイザーサウンド。電動髭剃り機のような(!)ノイズギターと意外にポップな歌メロ、の対比がなんだか面白い。

#7短い曲ながららオールドスクールなシンセの音色と、日本人的なメロディに心打たれる、、、ドラマ「おしん」的な世界観だなぁなんて。

#8ノイズと怪しいシンセが舞う、腹をグイグイ突き上げるようなリズム!どこかCanのVitamin Cを彷彿とさせる、非常にクールな楽曲!

#9チェーンソーのようなギターノイズの中ベースのフレーズをループさせ、歌が乗っかってくる。 途中から躍動感あるベースラインが曲をグイグイ引っ張っていく。とにかくCool!

#10エレクトリックな面が前面に出た曲。緊張感あるフレーズが忙しくなく空間を支配していく。 

これまでのアルバム、シングルと比べても、いい意味で角が取れて、若干聴きやすくなったような印象を受けた。Anika名義のソロ作品含めた中でも、今作はAnika入門編として最も相応しいアルバムではないかと思う。オススメ!!