Crumb「Jinx」(2019)

2020年10月29日

アメリカはニューヨーク州ブルックリンとマサチューセッツ州ボストンを股にかけて活躍するサイケデリックロックバンドCrumb(クラム)のデビューアルバム。


ボストンの大学で出会った仲間でバンド結成。同じくボストンで活動しているラッパーが在籍しているバンドBad and BlueやソウルのビッグバンドThe American Symphony of Soul などに参加し、キャリアを積み上げつつ、以前からVocalのLila Ramani(リラ・ラマニ)が書き溜めていた曲をバンドでレコーディングし、16年に1stEP「Crumb」を17年に2ndEP「Locket」をリリース。

シングル曲「Locket」1300万再生を超えるなどUSインディーで最も注目されるバンドとして以前から話題になっていたCrumb

個人的には、メロディやコードの持って行き方、気怠げな歌声なんかにThe Cardigans(カーディガンズ)の影響を感じた。特に、「Gran Turismo」(グラン・トゥーリスモ)のころのちょっとマイナーな雰囲気のThe Cardigans。あと若干、ケレン味のあるサイケデリックなアレンジに、Broadcast(ブロードキャスト)Stereolab(ステレオラヴ)、明らかにHIPHOP以降の、自由なバンドアレンジという意味で、Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)あたりに通じるものがあるのでは?なんて思った。

今作収録の”Nina”のMVには、なんとツインピークスの俳優デイヴィッド・パトリック・ケリーが出演するなど話題となっている。

ベースの彼のグリーンのカールコードに目がいってしまった。最高すぎる!!

メンバー

・Lila Ramani(リラ・ラマニ)ーVocal・Gutar

・Brian Aronow(ブライアン・アロナウ)ーSynth・Keys・Saxophone

・Jesse Brotter(ジェシー・ ブロッター)ーBass

・Jonathan Gilad(ジョナサン・ギラッド)-Drums

楽曲紹介

01. Cracking

02. Nina

03. Ghostride

04. Fall Down

05. M.R.

06. The Letter

07. Part III

08. And It Never Ends

09. Faces

10. Jinx

#1 なんとも不穏な電子音と物憂げな歌声、まるで夜空を漂っているような極上のドリームポップ。一気に引き込まれたのはいうまでもありません!!

#2 なんか思いっきり夜を連想させるジャジーなシャレオツムードですが、サイケな世界を行ったり来たり、非常にドラマチックな楽曲。瞬間的に使われる歌のループや魅惑のサウンドスケープなど、サイケ濃度全開!!

#3 ループするギターフレーズが印象的なサイケポップ!!ところどころ細かいところをリバースさせたり芸が細かい!!聴きやすい上に彼らのこだわりを感じる。

#4 シンセが前面に出た80sエレポップ風楽曲。アンニュイなボーカルが曲とよくあっている。時折顔を覗かせるジャジーなコード感にやはりスウェデッシュポップの影響が垣間見える。

#5 冒頭のサイケデリックなリバース加工から何が始まるか期待感を煽られ一気にジャジーな気怠げパートに突入していく。気づけば宇宙的サイケデリア。クラウトロックにも通じるSF的展開!!

#6 白昼夢系ドリームポップ!メランコリーな雰囲気いっぱいな前半からリズムが切り替わりプログレのような展開に。クリムゾンのエピタフのように大きな悲しみにつつまれ再び白昼夢に戻る。ドラマチックながら楽曲としては短め。

#7 サイケ版The Cardigansといわんばかりの楽曲。しかも途中から曲調がガラリと変わるという離れ技をなんの違和感もなくサラリとやってのけるあたりさすが!

#8 三拍子を主体にした曲。ギターのフレーズから始まり、シンセ関係が前面にでる圧倒的な浮遊感パート、ドラムによるリズムが際立つパートなどゆったりとしていながらドラマチックなので最後まで飽きさせない。

#9 こちらも浮遊感満載!#8もそうだけれどBroadcastの影響もありそう!!

#10 すごく洗練された雰囲気の楽曲。The fin.とかに通じるものがあると思う。BroadcastやSteleolabにも通じる懐の深さと現実と夢の狭間を行き来するようなサイケデリックな世界観を彼らなりのポップスとして上手く昇華されていてすごい。

サイケデリックな持ち味を、ポップな楽曲として聴かせてくれる彼らの手腕はさすがだと思う。また、HipHopを初め、ブラックミュージックを当たり前のように咀嚼してきたであろう彼らのノリがこの手のバンドとしてはとても新鮮に感じた。今後、どのような活動をしてくれるのか楽しみでしょうがない。