Soen「Imperial」(2021)

スウェーデンのプログ・メタルバンドの5thアルバム。

アートワークはWriliya(ライリヤ)が担当!!

「Lotus」(19)以来2年ぶり通算5枚目となるアルバム「Imperial」。前作から引き続き<Silver Lining Music>からのリリース。

OpethのドラマーMartin Lopez(マルティン・ロペス)と元Willow TreeのボーカリストJoel Ekelöf(ジョエル・エケロフ)が中心となって結成されたスウェーデンが誇るプログ・メタルバンドSoen(ソーエン)。前作「Lotus」リリース以降、ベーシストのStefan Stenberg (ステファン・ステンバーグ)が脱退し、代わりにOleksii 'Zlatoyar’ Kobel (オレクシイ・ズラトヤール・コベル)が加入。彼はセッションミュージシャン、ソロプレイヤーとしても活動していて、ポップミュージック、フュージョン/ジャズ、ヒップホップ、メタルなど比較的、マルチに対応できるプレイヤーのようだ。ソロではベース一本で完結してしまうようなフュージョン/ジャズ系のメロウで繊細な音楽をプレイ。6弦ベースによる流麗なプレイはついつい引き込まれてしまう。

今作のアルバムリリース前に発表されたプレイスルー動画でのプレイ↓

幅広く対応できる彼のベースプレイが影響したかどうかは分からないが、今作「Imperial」は、過去最高のポップネスと構築美光る作品となった。Toolからの影響を強く感じた1st「Cognitive」、そこから、よりプログレッシブに独自の世界観を出し始めた2nd「Tellurian」ときて、3rd「Lykaia Revisited」、4th「Lotus」は正直、どうも決め手に欠ける地味な印象を受けた。ところが今作は、今まで培ってきた世界観はそのままに、圧倒的にメロディアス。特に歌メロは今までにないくらい洗練された印象を受ける。Joel Ekelöf圧倒的に表現力豊かなボーカルワークが「Imperial」の世界を引っ張っていく。また、歌の存在感を際立たせるための緻密なコーラスアレンジが印象的だ。彼らは地を這うようなアグレッシブなヘヴィネスと、透明感、浮遊感が共存したプログレッシブな世界観が特徴的だが、今作はメランコリックで異世界に誘われるようなストリングスや鍵盤のアレンジが世界観を豊かにしている。それでいて楽曲の構造が今まで以上に分かりやすく作られているので、普段この手の音楽を聴かない人にこそぜひ聴いてもらいたい。Soenの入門編としてもオススメだ!!


メンバー

・ Joel Ekelöf(ジョエル・エケロフ)Vocal

・ Cody Ford(コディー・フォード):Guitar

・ Lars Åhlund (ラース・オールンド):keyboards/Guitar

・ Oleksii 'Zlatoyar’ Kobel (オレクシイ・ズラトヤール・コベル):Bass

・ Martin Lopez(マルティン・ロペス):Drums

楽曲紹介

01. Lumerian

02. Deceiver

03. Monarch

04. Illusion

05. Antagonist

06. Modesty

07. Dissident

08.  Fortune

#01 切れ味鋭いリフ〜グルーヴィで力強いバンドサウンドが鳴らされ、自然と首を振っている自分がいる。ヘヴィでグルーヴィな音をバックに美しくも切ないメロディが紡がれていく様は、CreedやAlter Bridgeを彷彿とさせる。

#02 グルーヴィなニューメタルライクなサウンド〜タメの効いたリフへの展開が気持ち良い。キレのある演奏が、楽曲に躍動感を与えている。

#03 スラッシーな要素を織り交ぜながらも全体的にはメロウな印象のミドル曲。静と動を意識した各パートのアプローチが本当に上手く出来ている。終盤のストリングスの音色がとにかく美しい。

#04 物悲しい歌メロとブルージーなギターが大人のエモーションを感じさせる。

#05 プリミティブなドラミングと地を這うようなリフが組み合わさり、渦を巻くようなグルーヴを生み出し、思わず拳を突き上げてしまう。グルーヴメタルにも通じる一体感を感じる。

#06 イントロを始め何度か登場するメランコリックなストリングスアレンジが非常に印象的。浮遊感パートに徐々に歪みパートが重なり、世界観が立ち上がっていく様は、聴いていてゾクゾクする。じっくり聴き込んで欲しい曲。

#07 楽曲通してPantera、Lamb of Godあたりを彷彿とさせる力技でねじ伏せるようなパワフルなグルーヴがあるが、中盤に挿入されたピアノと歌によるパート〜サンバのようなダンサブルなアレンジに儀式的な印象的を受けた。静/動、併せ持った奥行きのある楽曲。

#08 グワーとねじれるようなマイナーなコード進行のリフから徐々に光が感じられ、希望が見えてくるドラマチックな展開。Live会場で皆んなでシンガロングしているところを勝手に想像して少しウルっと来てしまった。まさにアルバムの締めに相応しい一曲。