DIR EN GREY「The World of Mercy」(2019)

2020年5月19日

1997年大阪で結成されたV系ロックバンドです。メンバーは、

Voice:京・Guitar:薫・Guitar:Die・Bass:Toshiya・Drums:Shinya

の5人です。99年、YOSHIKIプロデュースで「アクロの丘」「残ーzan-」「ゆらめき」のシングル3枚同時リリースでメジャーデビュー。2ndアルバム以降はセルフプロデュースで自らの表現を追求。「痛み」を表現することをテーマに、日和ることなく、むしろ表現方法は年月を重ねるごとにより過激になっていく様は、痛快です。海外での活動も活発で、08年7thアルバム「UROBOROS」が世界17カ国で同時発売、(当時、元Dream Theaterのドラマー、Mike Portnoyがその年のフェイバリットアルバムに挙げていたことでも話題になりました)全米からヨーロッパ、アジア、オーストラリア等30カ国以上でliveを行なっています。国内でのメディア露出は決して多くはありませんが、国内外数々のフェスやツアーを通して、彼らは、熱心なファンを増やし続けています。

The World of Mercy

今回リリースされた30枚目のシングル「The World of Mercy」はシングルらしからぬ10分を超える長尺曲で、歌詞は18年9月に発売された10枚目のアルバム「The Insulated World」からの流れの締めくくりといった位置付けのようです。10分を超える大作でありながら長さを全く感じません。かと言って過剰な情報量と展開で聴くものを圧倒する訳でもありません。今回は、今までになく曲中の“間(ま)"が活かされた、スタイリッシュな印象を受けます。(今回はタイトル曲のみのレビューです)

鼓動の様に鳴り響くキック音、、、

今回、ホラー映画のサントラを彷彿とさせるサウンドの中、打ち込みによるキック音で始まります。過去にも、メンバーの楽器以外の音で始まる曲というのはあるにはありましたが、どちらかというと「曲が始まるきっかけ」的な役割が多かったと思います。今回は、"キックパートと歌だけ"の部分が長く続くので曲のトーンを決定づける重要な役割として存在します。

ギター音のバランスに変化

彼らの代名詞となるツインギターのコンビネーションにも変化が感じられました。Die氏のクリーンギターストロークが奥まった印象です。ヘヴィなリフの上に煌びやかなクリーンギターを鳴らすことで、コード感の広がりをみせ、ヘヴィなサウンドを耽美的に彩ってきたのですが、今回はこの彩りが控え目な印象。色で例えると、何種類もの色で作られた過去の長尺曲と比べて、今回はあえて3種類くらいに色を絞ってまとめられたといったところでしょうか。

メンバーのインタビューでも、展開や情報量が多くなりがちな長尺曲に関して思うところがあったようで、雛形が出来上がるまで大分時間を要したようです。曲が淡々と進む中で細かい音の足し引きが楽曲にいい具合の緊張感を作ります。これだけたっぷりと"間(ま)"を大事にしながらサビに至るまでリスナーの興味を持続させるというのはとても難しいことではないかと思うのです。

そして楽曲は動き出す、、垣間見える影響

圧倒的なサビのメロと地殻変動を起こすかのような轟音ギター、しっかり支えるリズム隊という鉄壁のバンドサウンドで曲は一気に動き出します。

曲中印象的な、北欧のメロデス勢を思わせるギターのトレモロ奏法パートは、閉塞感の強い前半から爆発モードに至るまでのブリッジとして、非常に重要なパートです。カッコいいんだなこれがっ!

そこからメタリックなリフと京の咆哮、強靭なリズム隊が一体となって突撃開始!霧がかった閉塞感を打ち破る疾走部分は思わず拳を握ってしまいます。聖歌隊のような京のコーラスが入ってくることでよりドラマチックなシーンを作ります。ここでこうくるか!!と思わず唸ってしまいました。Fleshgod Apocalypseとか好きな人はこの辺り好きかもしれません。

曲中や最後、白玉一発でジャーンと鳴らした時のギター、Jesuなどのポストメタル勢を彷彿とさせる地を這う様な音色に、音響系メタルとしてのDIRの未知なる可能性を感じたりもしました。

1つの流れは収束し、再び動き出す

組曲のような構成のこの曲は、一旦全ての音が止まり、再び歌と共に始まります。終盤「自由〜」でさらに高いところに向かう京のメロディ。彼らはクライマックスに向け、駆け上がりますが、登りきったところで一気にテンポダウン。奈落の底に落ちたかのような京の咆哮、やがて訪れる聖歌隊のような清らかなコーラス、さらにこの作品の最後に相応しい、、ギターによる泣きのトレモロリフ!!ドラマチックな展開に、感動してしまいました。

聴けば聴くほど味が出る、、、

展開自体は決して多くはないですが、同じコード進行でも場所によって1番と2番で各楽器のアプローチをパズルのように細かく組み替え、緊張感を持続させます。実はっ!一聴しただけでは分かり辛い細かーい音が色々なところで鳴っているので、是非、部屋を真っ暗にして集中して聴くことをオススメします!