Lamb of God「Lamb of God」(2020)

2020年10月29日

ヴァージニア州リッチモンド出身のヘヴィメタルバンドの8thアルバム。


プラハ公演での事件の影響から音楽性に大きな影を落とした、前作「VII: シュトゥルム・ウント・ドラング ~ 疾風怒濤」(15)リリース以降、バンドとしては、Randy Blythe(ランディ・ブライ)が白血病患者だったファンとの交流から得たインスピレーションを反映させたEP「The Duke」16年に、そして、前身バンドBurn the Priest名義でのカヴァーアルバム18年にリリース。またギタリストのMark Morton(マーク・モートン)は、ゲストボーカルを迎え、自身のルーツを反映さえたソロ作品を去年、今年と立て続けにリリース。忙しない活動の中で、彼らは自分たちの内面を探求し、再確認するサイクルに入っていた。セルフタイトルとなった今作は、混迷の現代社会に叩きつける怒りの鉄槌であり、再確認サイクルから新しい旅に出発するための最初の一歩となる重要な作品なのだ。

そしてやはり大きなニュースと言えばバンド結成当時からのメンバーChris Adler(クリス・アドラー)(Dr)の脱退であろう。16年にリリースされたMEGADETHの15thアルバム「Dystopia」のレコーディング、ツアーに参加したChris Adler。引き抜きの誘いを断るも、バイク事故や婚約という人生の大きな出来事を期にバンドを脱退することを決意。そしてChrisの紹介でProngWinds of Plagueでも活躍してきたArt Cruz(アート・クルーズ)が加入!!彼はもともとLamb of Godのファンであったため、自分のスタイルを大きく変える必要は無かったという。今作でも、クリスの脱退を微塵も感じさせない、パワフルなドラミングで活躍している。

Winds of Plagueのドラミング・・・凄まじい!!

メンバー

・ Randy Blythe(ランディ・ブライ):Vocals

・ Mark Morton(マーク・モートン) :Guitars

・ Willie Adler(ウィル・アドラー) :Guitars

・ John Campbell(ジョン・キャンベル):Bass

・ Art Cruz(アート・クルーズ):Drums

楽曲紹介

01. Memento Mori

02. Checkmate

03. Gears

04. Reality Bath

05. New Colossal Hate

06. Resurrection Man

07. Poison Dream

08. Routes

09. Bloodshot Eyes

10. On the Hook

11. Ghost Shaped People(ボーナス・トラック)

#1 どこか悲しみを感じる幽玄なアコースティックギターの音色をバックに、子守唄のようなランディの声が優しく響き渡る。女の子の囁き声が聴こえるなど、彼らにしては珍しい映画的なアレンジ・・・とここで一気にフルスロットル!レッドゾーンを振り切るかのような怒涛の展開には思わず拳を握ってしまう。 

#2 冒頭にスタジオ録音でのメンバー間の話し声が一瞬入り→ブルージーなギターからのヘヴィなリフが叩きつけられる!!Lamb of God節全開!!

#3 地を這うようなヘヴィなリフとスネアによるフレーズが非常にパワフル。時折、ツーバス連打による疾走感を入れることで楽曲にメリハリができて、曲の世界に自然と引き込まれる。

#4  珍しくベースから始まる楽曲。フレーズからするともっとプログレッシブな楽曲になると思いきや、地を這う様なスラッシーなリフが炸裂。この曲も#3 と同じく、とにかくツーバス連打が気持ち良い!!

#5 冒頭から殺傷力のあるリフがとにかくカッコいい!!鬼気迫るアグレッションはなんとなく5thアルバム「Sacrament」時代の楽曲を彷彿とさせる。やはりカッコいい曲はノリが良いのだ。(なんのこっちゃ)

#6 オルゴールの音色からの「ビビビュュュアッッッ」からの鈍器で殴られるようなヘヴィなサウンド。不協和音リフが印象的で、凡百のメタルバンドとは違い、品があるのだ。楽曲の世界観を作り上げる重要な役割を担っている。重心を落としめのヘヴィサウンドながら冒頭から映画的なアレンジが施されるなど、雰囲気抜群の楽曲となっている。

#7 デスラッシュ系のリフから加速するかと思いきや、じっくり嬲ってくるスタイルはやはりLamb of Godならでは。そんなに派手なことをしなくとも十分にエクストリームな表現は可能であるということを証明してくれる。Hatebleedの(Vo)Jamey Jastaが参加。

#8 ここにきて疾走感のある楽曲である。ドラムソロからのアグレッション全開のリフには思わず拳を握り、頭を振るしか選択肢が残されていない。サビ→一旦落とす→からの天にも登るような熱いギターソロ!!にはひたすら涙するしかないし、終盤にはちゃっかりシンガロングパートも作られているという至れり尽くせりぶりにはただただ感謝しかない!!TESTAMENTの(Vo)Chuck Billyが参加。

#9 Panteraを彷彿とさせるグルーヴィなリフで引っ張っていく楽曲。単調に作られていると思いきや展開に細かいこだわりが感じられる。何回でも聴きかえしたくなる曲。

#10 冒頭から殺傷力の強い強力なビートの釣瓶打ち状態。疾走感、ブルータリティは今回のアルバムの中でもトップクラスだろう。要所要所でブラストビートを駆使しながらリズムに勢いを加えていく。ブルージーなフレーズから徐々にギアを上げていく後半パートが入ることで、楽曲に奥行きが生まれ、聴き応えのある作品となった。

#11 海外では限定2LP+CDボックスに収録されているが日本では国内版CDにのみ収録。本編に入っていても遜色ない強烈なスラッシュナンバー。

今作のジャケットに描かれている壊れた時計は何を意味するのか?コロナ問題を機に既に新しいフェーズに突入しようとしているこの世界で、我々の生活はどのように変化していくのか?未だはっきり先が見通せない中で、ただただ彼らの変わらない”強靭な音”を聴いていたいと思う。