Sepultura「Quadra」(2020)

2020年10月29日

ブラジルを代表するメタルバンドSepulturaの15thアルバム。


前作、「Machine Messiah」は大々的なオーケストレーションやクワイアの導入、Derrick Green(デリック・グリーン)による新たな歌唱法の導入等を始めとして、バンドが新たな可能性に挑戦した、各々メンバーにとっていい意味でのチャレンジの場となった。(最後はウルトラセブンのテーマ!!??という壮大なギャップ萌え)

今作、「Quadra」(クアドラ)前作試みたアプローチをさらに推し進めた作品であり、かつ今までの時代、時代で培われてきたSepulturaの魅力が上手いこと詰め込まれた幕内弁当的な側面もある。「まだSepulturaをよく知らない」「どのアルバムから入ったらいいかわからない」という人達にこそぜひ聴いてほしいアルバムでもある。実は、Sepulturaを新しく知るにはもってこいのアルバムなのだ。

”4”とアルバムの関係

今回、ジョン・ノース著「Quadrivium」という数秘術に関する本で記されている、歴史の中で数字が担ってきた意味にインスピレーションを受けたようだ。取り分け、”manifestation"(現れること、明示されること)を意味する”4”という数字に、自分たちが過去25年の活動の中で語ってきた「現在を生きること、今を尊重する」というメッセージと重なる部分を見出し、大いに影響を受けたようだ。

そのため、今回のアルバムタイトル「Quadra」も”4”からきているし、楽曲も”4つのパート”に分かれている。


初期を彷彿とさせるゴリゴリスラッシュメタル路線: #1、#2、#3

グルーヴメタル・民族音楽的アプローチ路線: #4、#5、#6

インスト路線: #7、#8、#10(途中から歌入るけど)

前作「Machine Messiah」のタイトル曲に近いもの(スローでメロディがあって、今までにはなかった雰囲気を持った曲)路線:#9、#11、#12

かなり早い段階でこの上記の4つに分類したようだ。


メンバー

・Derrick Green(デリック・グリーン):Vocal

・Andreas Kisser(アンドレアス・キッサー):Guitar

・Paulo Xisto Pinto, Jr(パウロJr):Bass

・Eloy Casagrande(エロイ・カサグランテ):Drums

楽曲紹介

01. Isolation

02. Means To An End

03. Last Time

04. Capital Enslavement

05. Ali

06. Raging Void

07. Guardians Of Earth

08. The Pentagram

09. Autem

10. Quadra

11. Agony Of Defeat

12. Fear; Pain; Chaos; Suffering

#1 徐々に輪郭を表す世界観 。大仰なクワイアの中スラッシーなリフを合図にスタート勢いよく幕を開ける。
そこには「Arise」あたりの初期のゴリゴリスラッシュメタル期を彷彿とさせるスラッシーなスタイルが!!

#2 トライバル全開のSepultura!!もう拳を握りしめて頭振るしか選択肢は用意されていない。ここまでダンサブルなスラッシュメタルを聴かせられるのは彼らしかいない。関係無いが、筋肉少女帯「イワンのばかを聴いている時の高揚感に似たものを感じた。

#3 ツインギターによる高速リックから音塊を叩きつけるようなスラッシュメタル。S.O.D.を思わせるような高速スラッシュ/ハードコア的展開もありつつ、巧みなリズム展開で聴いているものを引き込んでいく

#4 まさにトライバル!!前作から引き続いて緊張感あるオーケストレーションが随所に登場。ドラマチックに演出する。

#5 タイトル「アリ」・・・??モハメド??なんて思ってたら実際にモハメド・アリのことを歌っているようだ笑。グルーヴメタル的粘り強さが前面に出ている曲。重心を一旦落としたAメロから戦闘態勢のようなBメロの流れなどボクシングのやりとりのようでもあるし、我々各々の人生を描いているようでもある

#6 リフとドラムの絡みが面白い、プログレッシブな印象の曲。こういった複雑なリズムアプローチの楽曲はエロイのドラムに触発された部分が多いように感じる。

#7 インストかと思いきや1分45分頃になってVoが入るという・・・やりおるのお。とにかくドラマチック!!クラシックギターによる荘厳な調べからパーカッシブなドラムフレーズが被さり大仰なクワイアが鳴り響き、緊張感もピークに向かう中、突如獣のような咆哮と歪みギターが叩き込まれる。3分22秒からのギターフレーズが次なる展開のきっかけとなりドラマチックなギターソロが紡がれ、再び戦闘シーンへ引き戻され終わりへと突っ走る。

#8 さまざまな場面が展開されていく、これまたエロイの存在感が光るバカテクなインスト曲。彼らの積み重ねてきた土台があればこその楽曲であり、純粋に曲としてカッコいい!!

#9 バンド全体でノリを作っていく箇所→一旦落ち着かせて→拳をあげたくなるシンガロング系サビ→高速スラッシュ・・・という目まぐるしい展開ながらテンポ良く、彼ら独自のノリを感じさせつつ、思わず一緒に歌いたくなるさすがな楽曲。

#10 ツインクラシックギターによるクラシカルなインスト小曲。

#11 Alter BridgeCreedの楽曲に近い雰囲気を感じる。珍しく歌を聴かせるアレンジである。しかし、並外れたパワフルな歌声に、ひたすら圧倒されること間違いなし。

#12 ハーモニクスを織り交ぜたギターフレーズからの女性Vo。パワフルなリフからギターソロへの展開など非常に流麗かつドラマチックで思わず何度も聴きたくなる。

前回に引き続きイェンス・ボグレンとのタッグでリリースされた今回のアルバム。オーケストレーションやプログレ要素など、「Machine Messiah」で切り開いてきた道をさらに推し進めた今作。できればいつか来日公演で生「Quadra」を聴いてみたい、そしてできれば今後もイェンス・ボグレンとのタッグでさらなる道を切り開いていってほしいとただただ期待するばかり。今後も彼らの活動に注目です!!