Pupil Slicer「Mirrors」(2021)

ロンドン出身のカオティック・ハードコアバンドのデビューアルバム。

アートワークはNick Povey(ニック・ポヴェイ)が担当!!

Pupil Slicerにとって初のフルレングスアルバムとなる「Mirrors」。名門<Prosthetic Records>からのリリース。

15年にバンド結成!!メンバーのラインナップに関しては紆余曲折あったようだが、18年にベーシストのLuke Fabian(ルーク・ファビアン)が加入し、現在のラインナップに。その後にリリースされたSence Offenderとのスプリット作品「Pupil Slicer/Sence Offender」(19)では、カオティック・ハードコア/マスコア要素を取り入れた、より複雑なサウンドに変化。

今作「Mirrors」は、Converge、Botch、Dillinger Escape Planなどからの強い影響を感じさせるカオティック・ハードコアと、NailsFull of Hell、Trap Themなどを彷彿とさせるダークな質感が融合。所々、“Code Orange以降"を感じさせるインダストリアルなアレンジポストブラック的なギターアプローチなど、新世代感溢れるアプローチもしっかり聴くことができる。そしてなんといっても、ボーカルKate Davies(ケイト・デイビス)の中にある負の感情が爆発的な力となって聴き手に迫ってくる。ヘイトの限りを撒き散らすボーカルスタイルは、単にデスボイスとかスクリームなどとカテゴライズすることに違和感を覚えるほど。歌唱法というよりも、生の感情からくる叫びである!!

グルーヴィで激烈にカオティックなハードコア・・・というと取っつきづらそうなイメージだが、非常にキャッチー!!不思議と何度も聴きたくなる中毒性を秘めている。収録曲は徹頭徹尾アグレッシブな楽曲〜ニューウェーブ色を取り入れたドラマチックな楽曲まで、彼らの音楽的バックボーンの豊さが滲みでている。今後どういった方向性に舵を切っていくのか気なるところ。確実に、今後注目を集めること間違いなし!!とにかく要チェック!!


メンバー

・ Kate Davies(ケイト・デイビス)Vocal/Guitar

・ Luke Fabian(ルーク・ファビアン):Bass/Backing Vocal

・ Josh Andrews(ジョシュ・アンドリュース):Drums

楽曲紹介

01. Martyrs

02. Stabbing Spiders

03. L’appel Du Vide (feat. Carson Pace)

04. Panic Defence

05. Husk

06. Vilified

07. Worthless

08.  Wounds Upon My Skin

09. Interlocutor

10. Mirrors Are More Fun Than Television

11. Save the Dream, Kill Your Friends

12. Collective Unconscious

#01 洞窟の奥底から聴こえてきそうな密教的な雰囲気からシームレスに激烈なカオティック・ハードコアへ。CDの音飛びのようなアレンジはCode Orangeからの影響か?ガンガン攻め込むスタイルかと思うとスパッと流れは断ち切られ、静かなギターをバックにKateの咽び泣く声が木霊するダークな質感のハードコアが展開。1曲の中に何曲分かのアイディアを詰め込み編集したような印象。展開に次ぐ展開!なんじゃこれは!!

#02 ConvergeDillinger Escape Planを思わせる不協和音リフが炸裂!!一気に緊張感を高めていく。マスコア的なリズム展開でありながらプリミティブな破壊力がある。1分もいかない短い曲だが圧倒されること間違い無し。

#03 ドライブするベースリフで一気にテンションはMAXに!!これはLive映え必至!!最初パッと聴いた印象はそう複雑に感じなかったが、よくよく聴くとかなり難易度の高い演奏を繰り広げている。負の感情のつるべうち状態。汗、涙、鼻水、鼻血でグチョグチョになりながら憎悪をぶち撒けるようなKateの叫びは圧巻。

#04 重めのグルーヴとグラインドコア的なカオティックな疾走感が共存している。短い曲ながら様々なアプローチが盛り込まれた曲。怒りと悲しみにまみれた漆黒のグルーヴが渦巻いている。

#05 Live映えしそうな、勢いあるリフから一気に破壊力のある漆黒のグルーヴへ雪崩れ込む。マスコア的なリズムの仕掛けを所々に挟みながら、NailsConvergeの影響を強く感じさせるダークなハードコアサウンドを鳴らしている。

#06 音は物凄いヘヴィだけど、ぶっ飛んだ疾走感はハードコア/スラッシュなクロスオーヴァー勢とも通じるものを感じる。ダークな質感でありながら、いい意味で鳴らしているフレーズはキャッチーだったりする。

#07 ベースの地を這うようなリフからスタート。カオティックで独創的なギターフレーズが印象的。終盤展開されるヒステリックなアレンジとボーカルワークが見事にリンク。増幅された負の感情に圧倒される。

#08 CDの音飛びのような音をサウンドとして成立させているこのバンドの発想が恐ろしい。Code Orange以降ならではのサウンドではないだろうか。めちゃくちゃクール!!

#09 バスドラムの入り方が特徴的な冒頭のパートから一気に不協和音リフ全開のカオティック・ハードコアスタイルへ。ひたすらに叩きつけられる激烈なサウンドと、ヘイトに塗れたボーカルワークにひたすら圧倒される。

#10 Dillinger Escape PlanやConverge、Old Man Gloom、End、Nailsなどの要素がごった煮になったカオティックハードコア。プログレッシブな展開にただただ圧倒される暗黒ハードコア絵巻。

#11 ひたすら畳み掛ける憎悪の籠ったサウンド。カオティック・ハードコアの疾走感とともにギリギリとねじ伏せるような力技で迫ってくる。音飛びのような音の加工にCode Orangeからの影響を感じさせる。

#12 ポストブラック勢を彷彿とさせるアレンジが光る。Deafheavenをルーツに持っているKate。この曲を最後に持ってくるのも納得。とにかく泣き叫び、嗚咽する様は初期のKornにおけるジョナサンにも肉迫するものがある。