Knife Wife「Family Party」(2019)

2020年10月29日

ワシントンDCを拠点に活動しているローファイ・ポストパンクバンドのデビューEP。 


<Syster Polygon>からまた新星が登場!Priests/GaucheDaniele Danieleが地元DCで見つけた、”今最も興味深いバンド”と紹介する10代のガールズトリオKnife wife(ナイフ・ワイフ)

ワシントンDCの女性3人組ポストパンクバンド。まず音を聴いて衝撃。徹底してダルそうに歌うVocal。そしてこれまたダルそうなバンドサウンド。これがとにかくかっこいい!!映画から出てきたような雰囲気のヴィジュアルも、いい意味でポップで、どんな人たちなんだろうと想像してしまうような魅力がある。

ワシントンDCといえば<Discord Records>の本拠地。80年代、90年代、ハードコアパンクが発展した、音楽史に刻まれる街。彼女たちをそういった文脈で語りたがる音楽ファンも多いようだが、彼女たちは直接の影響は受けてないという。しかし、現在のシーンに無関心ということではなく、周りのバンド(Clear Channel Des Demonasなどと言ったバンド)をロールモデルに、様々なことを学びながら独自の活動をしているようだ。

サウンド面の特徴で言えば、ものすごく音数が少ない。普通、パンクやガレージというと荒々しくコードをかき鳴らすイメージだが、彼女らのサウンドはコードというよりもシンプルなドラムの上でギター、ベースが単音で音を鳴らしながらつくりあげる極めてシンプルすぎるくらいシンプルに削ぎ落とした音像。バンドの音数の少なさ、シンプルさという意味でYoung Marble Giantsを思い出す。音数の少なさ故、際立つ“メロディの良さ"“表現の鋭さ"みたいなものが浮き彫りになる。また、ドヨーンとした気怠い雰囲気にグランジからの影響も感じる。

前に紹介したDrahlaなんかと近い雰囲気があるかもしれない。あとラフな歌い方という意味でGoat Girlなんかも近い部分があると思う。


メンバー

・Sami Cola(サミ・コーラ)

・Nico Castleman(ニコ・キャッスルマン)

・Ruby Parrish(ルビー・パリッシュ)

担当パートは曲によって変わります。このラフな感じも彼女たちらしさを感じる。

楽曲紹介

01. Dreamland

02. Silly Pony

03. Reptile

04. The Dentist

05. Every Living Thing

06. Lobe

07. Cheek

08. Fruity Void

09. Angel Face

10. Dogs

#1 怠そうなノリのギターフレーズがなる中、2人のVoとスネアがこれまた気怠く入ってくる。途中からベースラインが前に出てくることで曲に変化をもたらす。

#2 ギターの単音が鳴らされる中、静かに歌い出す。唐突に歌にコーラスがかかり、Siouxsie And The Bansheesを思い出す。サイケデリックな鍵盤とシンプルな演奏との組み合わせが面白い。

#3 スローな曲。2人の歌の掛け合いなんかも意外に凝ってる。ほぼドラムとギター、歌なんだけど何故か引き込まれる。これだけ音が少ないと逆に演奏結構大変なんじゃ??

#4 非常に印象的なフレーズを2人で口ずさむ。歌なんかは意外にポップなところはポップなのに、はしゃがない・・・というか。どんなにポップさ加減をチラ見せしても”血圧の低さは生まれつきなんで”とか言われそうなくらいのテンションの低さがめちゃくちゃクール。

#5 ここまでの流れで1番歌に力入ってるんじゃ??とおもったらインタールード的なやつだった。

#6 The MonkeesのSteppin’Stoneを思わせるコード進行の上で、呟きに近い歌が乗る。展開もほぼなく淡々とした曲だけに、楽曲から伝わる冷たい雰囲気が若干コワイ。

#7 パンクとかガレージよりそれこそStereolabのような雰囲気のコーラスが印象的。こちらも呟きに近い歌。途中、シャウトや悲鳴のような声がいくつか挿入されるが、パンク的な迫力より、楽しそうな雰囲気が十二分に伝わってくる微笑ましくなる曲。

#8 ループするシンセトラックの上で、歌というよりラップに近い歌唱法を載せる。中毒性のあるシンセトラックが耳から離れない。

#9 うねるベース音によるトラック。呟きと歌の中間のような歌唱法がトラックに乗る。ベースラインと歌だけなのに、これだけ曲として成立してしまうことがすごい。

#10 超絶隙間だらけでゆったりなこの曲。メンバー2人で歌ったり、交互にコーラスをかましたりと、メロディセンスの良さが際立つこの曲。1分過ぎの展開はとりあえず心の中で拳を握ってしまうほどのカッコよさ。コーラスがとにかく洒落ていてカッコイイ。

メンバーのNicoがバンドを始めるきっかけとなったのは、幼少期にお父さんから見せてもらったCibo MattoのTV放送だという。楽しそうに活動している彼女たちを見て「私もバンドをやりたい」と思ったそう。固定観念に囚われない、いい意味でラフな雰囲気のあるKnife wifeの音楽スタイルは、もしかしたらCibo Mattoからの影響が濃いのかもしれない。これからどんな活躍を見せてくれるのか??楽しみだ!!